糖尿病治療のアプローチは日進月歩で、さまざまなタイプの開発・研究が進んでいますが、26日、熊本大学から興味深い臨床試験の結果が公表されました。ベルト型の医療機器を身につけることで、肥満2型糖尿病の治療効果が得られるといいます。
温熱微弱電流併用療法の実用化を目指す
この治療機器は、熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野の近藤龍也講師、荒木栄一教授、同大薬学部遺伝子機能応用学分野の甲斐広文教授らが開発してきたもので、温熱微弱電流併用療法での2型糖尿病治療を試みるものです。
微弱電流と温熱を同時に伝達する特殊ゴムを介し、身につけた患者の腹部へと直接刺激を与え、内臓脂肪の減少や血糖改善効果をもたらすとされています。
2型糖尿病では、ストレスに反応して起きる生体システムのうち、熱ショック応答経路(HSR)の働きが低下していることが分かっており、このHSRの主要タンパク質であるHSP72の機能回復を行えば、糖代謝異常が改善されることが判明しています。
開発された治療機器は、微弱電流と温熱の適切な併用で、HSP72を効率よく機能するよう促し、血糖値の低下、耐糖能およびインスリン抵抗性の改善、内臓脂肪量と肝臓での脂肪蓄積減少を実現するもので、モデル動物においてその効果を確認、ヒトへの実用化が目指されるようになりました。
研究チームはすでに2014年に臨床試験を実施し、1回60分を週4回行うことで、肥満2型糖尿病男性のHbA1c値を0.43%低下させることに成功、その結果を「eBioMedicine」誌で報告していますが、今回はさらに内容を進め、男女を問わず週2回、4回、7回の群に振り分けで12週間施行、どのくらいの頻度で治療を行えば、最も高い効果が得られるのか検討したそうです。なお今回の研究成果は、10月19日付で「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。
薬無しでの治療、また薬と併用したより効果の高い治療の実現に期待
研究では、男女混合の肥満2型糖尿病患者60人を対象に、1回あたり60分の治療をそれぞれ週2回、週4回、週7回行う3群に割り付けて、その効果を検討しています。その結果、全体で内臓脂肪面積11.7平方センチメートルの有意な減少と、HbA1c0.36%の有意な低下が確認されました。
また3群の比較により、内臓脂肪面積は週2回の群が5.37平方センチメートル減少、週4回の群が14.24平方センチメートルの減少、週7回の群で16.45平方センチメートルの減少と、実施頻度の高い群ほど内臓脂肪減少効果が発揮されていました。
HbA1c値においても、週2回で0.10%低下、週4回で0.36%低下、週7回では0.65%低下と、頻度の高い群で優れた効果が確認されています。加えて、慢性炎症、脂肪肝診断指標値(脂肪肝マーカー)、腎機能および脂質に関連する指標値(脂質プロファイル)の改善も認められたそうです。
そしてこの治療を、現在糖尿病治療で最も多く用いられているDPP-4阻害薬と併用した場合、より強い血糖改善効果が得られることも分かりました。
研究チームでは、今回の結果を含めたこれまでの研究成果により、温熱微弱電流併用療法の有用性が強く示唆され、糖尿病治療の新たな選択肢となることが確認されたとしています。この療法で用いられる医療機器は、ベルト型の機器を身体に装着するだけでよいため、患者さんへの負担も少なく、臨床導入が手軽です。
そうした手軽さの一方で、運動療法に類似した効果が期待できることから、過体重や高齢、四肢の障がいなどで運動療法の実施が難しいケースでも取り入れやすく、より効果の高い適切な治療を実施できるようになる可能性があると期待されています。
(画像はプレスリリースより)

熊本大学 プレスリリース
http://www.kumamoto-u.ac.jp/Scientific Reports : Activation of heat shock response to treat obese subjects with type 2 diabetes : a prospective, frequency-escalating, randomized, open-label, triple-arm trial
http://www.nature.com/articles/srep35690