糖尿病における深刻なリスクとして心血管系疾患の発症があることは広く知られています。実際に心血管系疾患によって命を落とす人も少なくありません。この心血管系疾患による死亡リスクの判定マーカーとして、アンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)という血中タンパクが有用である可能性が高いことが、最新の研究で明らかになり、臨床上注目されるところとなっています。
フランスのデータ解析による報告で判明
この報告は、フランスのBarnabas Gellen氏らの研究チームによりなされたもので、専門誌「Diabetologia」に掲載されたほか、9月にドイツで開催された「第52回欧州糖尿病学会(EASD)」でも発表されました。
アンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)は、血管新生因子であるアンジオポエチンに構造が類似した分泌型タンパクで、血管細胞や単球細胞に作用するなど、多様な生物学的作用をみせることで知られ、近年メタボリックシンドロームや2型糖尿病などの生活習慣病、さらにはがんの新しい治療標的として注目されています。
とくに肥満の脂肪組織では、このANGPTL2が多く発現していることが分かっており、単球細胞を脂肪組織の慢性炎症を引き起こすこと、全身でのインスリン抵抗性を生じさせ糖尿病発症につながりやすくすることなども判明しています。
今回研究チームは、2型糖尿病における心血管系合併症の遺伝および環境要因を探るべく、「SURDIAGENコホート研究」のデータを解析しました。対象となっているのは、年齢が中央値で64歳(対象は前後11歳)の2型糖尿病患者1,353人で、性別の割合は男性が58%、女性が42%となっています。追跡調査期間は6年間でした。
重要なリスクマーカーとして注目
解析では、すべての死因による死亡を主要評価項目とし、心血管系疾患による死亡、心筋梗塞、心血管死・狭心症・心不全・脳卒中といった主要心血管系イベント(MACE)を副次的評価項目としています。
すると、まず6年の追跡期間中に、全体の4.5%にあたる367人が死亡し、3.7%にあたる290人がMACEを発症していました。そこで、ベースライン時点の血中ANGPTL2値で、11.2ng/mL未満、11.2ng/mL以上14.7ng/mL未満、14.7ng/mL以上19.5ng/mL未満、19.5ng/mL以上の4つのグループに分けて検討を行ったところ、最もANGPTL2値の高い19.5ng/mL以上の群では、ほかの群に比べ、年齢や性別、その他の危険因子などを考慮した調整後データで、死亡リスクが2.44倍と有意に高くなっていることが判明したそうです。
また、主要心血管系イベントの発現リスクも有意に高く、2.43倍だったと報告されています。
この結果から研究チームでは、2型糖尿病患者でANGPTL2値が高い場合、死亡とMACE発現リスクが上昇するといえ、ANGPTL2がその危険性を判定する重要なマーカーになるほか、治療のターゲットになる可能性があると指摘しています。
現場での応用には、今後さらなる研究が必要になりますが、注目すべき知見がもたらされたことは間違いないといえるでしょう。
(画像はイメージです)

Diabetologia : ANGPTL2 is associated with an increased risk of cardiovascular events and death in diabetic patients
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