糖尿病はいまや誰にとっても身近な病気となり、かつ失明や人工透析導入にいたる深刻な合併症を発症するなど、社会全体で適切な診療が受けられる環境の整備と合併症予防を進めることが喫緊の課題となっています。しかし現在の状況には、まだまだ問題点が多く残されているようです。
大規模レセプトデータで診療の質を評価
東京大学大学院医学系研究科 社会医学専攻公衆衛生学分野の小林廉毅教授と田中宏和氏らの研究チームが今回、レセプト(診療報酬請求明細書)のデータベースを用い、糖尿病について、その診療行為や受診頻度、治療薬の処方など関連記録を抽出、データ精度を高めて分析することで、これまでにない大規模かつ高精度な糖尿病診療のプロセス評価研究を実施しました。
同大学から発表されたその結果によると、組合管掌健康保険に加入し、2010年度にインスリンまたは経口糖尿病薬の処方を受け、定期受診していた糖尿病患者7,464人では、翌年度のHbA1c検査や血中脂質検査の実施率は、それぞれ95.8%、90.6%と高い水準にありました。治療を中断した患者の割合は6.4%だったといいます。
合併症対策の検診も積極的に受けよう!
しかし、日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドラインで推奨されている、年1回以上の糖尿病性網膜症の検査を受けた人の割合は35.6%にとどまり、かなり低い状態にあることが判明したそうです。
また尿中マイクロアルブミン検査の実施率も低く、15.4%となっていました。これらの割合は、欧米における同様の研究報告と比べても低い数値であり、研究チームでは早急な改善が必要だと指摘しています。
検査の実施率が低い患者の特徴を分析すると、男性・勤労層に多い傾向が判明し、日本国内では20~50代の勤労層で、十分な受診時間が確保しづらくなっている可能性が示唆される結果となりました。
研究チームでは、糖尿病患者が継続して診療を受け続けるための受診勧奨は現在も行われていますが、より診療の質を向上させ、病態の進行抑制、合併症予防を進めていくためには、患者に対する受診勧奨はもちろん、受診しやすい環境整備や診療ガイドラインの啓発・普及、糖尿病診療を行うかかりつけの医師と眼科医など医療関係者を中心としたチーム医療の連携推進などを行っていくべきだとしています。
なおこの研究結果は、国際医学雑誌「BMJ Open Diabetes Research & Care」に9月9日付で掲載されました。
(画像はイメージです)

東京大学 プレスリリース
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/release_20160909BMJ Open Diabetes Research & Care : Process quality of diabetes care under favorable access to healthcare : a 2-year longitudinal study using claims data in Japan
http://drc.bmj.com/content/4/1/e000291