心血管系疾患の発症は、2型糖尿病患者における主な死因のひとつとしても知られ、その発症リスクを下げることは非常に重要なこととなっています。これに関連し、Novo Nordiskから2016年第52回欧州糖尿病学会(EASD)年次学術集会で、興味深い発表がなされました。
セマグルチドが主要心血管イベントリスクを26%低下
Novo Nordiskがドイツ時間の16日、発表したところによると、新規のヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログである「セマグルチド」を標準治療に追加して投与すると、心血管イベント発生リスクの高い成人2型糖尿病患者で、主要な心血管イベント発生のリスクを、プラセボに対し、統計学的に有意に低下させることができたそうです。
この研究成果は23日、日本国内でもノボ ノルディスク ファーマ株式会社から公表され、また「New England Journal of Medicine」にも掲載されました。
研究で実施されたのは、市販前テストの多施設国際共同無作為化、二重盲検プラセボ対照の心血管アウトカム試験である「SUSTAIN 6」で、心血管イベント発生について高いリスクを有する、世界20カ国の成人2型糖尿病患者3,297人を対象としたものです。参加患者は、セマグルチド投与群とプラセボ投与群にランダムで割り付けられ、104週間の治療を受けました。
標準治療は生活習慣の改善、血糖降下薬および心血管系治療薬の投与で、これに追加してセマグルチド0.5mgおよび1.0mgの週1回皮下注射を行うセマグルチド投与群と、プラセボ(偽薬)を投与する群での比較を行っています。主要複合エンドポイントは、心血管死、非致死性の心筋梗塞または脳卒中のいずれかが最初に発現するまでの時間としました。
その結果、主要心血管イベントの発生は254例で認められ、セマグルチドはその発生リスクをプラセボに対し、有意に26%低下させたことが確認されました。
脳卒中リスクは39%低下、HbA1c値の改善や体重減少・維持効果も
また非致死性の脳卒中発症リスクは、統計学的に有意に39%低下したことも報告されています。さらに有意といえる結果ではないものの、非致死性心筋梗塞の発現も26%低下したとされています。一方治療後2年では、心血管死アウトカムに違いは認められず、2%のリスク低下にとどまりました。
今回の「SUSTAIN 6」試験で、追加投与後104週時点では、ベースライン平均HbA1c値が8.7%から、プラセボ群では0.4%の低下でしたが、セマグルチド投与群では、0.5mgの群で1.1%、1.0mgで1.4%有意に低下していました。
また、ベースライン平均体重は92.1kgで、プラセボ群では0.5mg投与で0.7kg減、1.0mg投与で0.5kg減だったのに対し、セマグルチド投与群では、0.5mg投与で3.6kg、1.0mg投与で4.9kg減少といずれも有意に減少させることができ、これを維持させることもできたそうです。
「セマグルチド」は、血糖値に応じてインスリンの分泌を促進させ、同時にグルカゴン分泌を抑制するほか、食欲も抑え摂取量を減らすタイプのGLP-1 アナログ製剤です。現在開発中の新規薬剤で、週1回皮下注射投与の用法により、成人2型糖尿病の適応で承認申請・承認取得を目指しており、日本国内での開発段階は第3相にあります。
血糖コントロールや体重減少に加え、心血管イベント発生リスクを低下させる可能性があるならば、新たなベネフィットをもたらす治療選択肢として期待されるでしょう。今後の試験動向と開発が注目されます。

Novo Nordisk プレスリリース
http://www.novonordisk.com/bin/getPDF.2042547.pdfノボ ノルディスク ファーマ株式会社 プレスリリース
http://www.novonordisk.co.jp/New England Journal of Medicine : Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1607141