筑波大学医学医療系ニュートリゲノミクスリサーチグループは、2011年から筑波大学と東京大学に跨る研究グループとして、主にエネルギー代謝を生体内臓器で直接的に解析する手法などを用い、糖尿病をはじめとした栄養代謝関連の疾患における新規治療法開発、代謝調節機構のメカニズム解明などを目指して研究を進めています。
中性脂肪への合成・変換はどうやって調節される?
この研究グループが、食事状況に応じた肝臓での中性脂肪合成について、遺伝子レベルでの仕組みを解明することに初めて成功しました。その成果は米科学誌の「Cell Reports」誌に掲載され、注目を集めるものとなっています。
私たちは食事から炭水化物を摂取しますが、その余分に取り込まれた分については、体内合成によりエネルギー貯蔵物質として中性脂肪となり、脂肪組織などに蓄えられていきます。この体内中性脂肪が過剰となった状態が肥満で、こうなると、糖尿病や脂質異常症、高血圧なども引き起こしやすくなります。
よって、この中性脂肪の合成と蓄積をうまくコントロールできれば、さまざまな疾患リスクを下げることができるのですが、摂食時におけるその体内変換の働きについては、食後に活発化し、空腹時に低減することが分かっていたものの、どのように調節されているのかは、不明なままでした。
タンパク質「KLF15」が深く関与、増加させると中性脂肪値が低減
そこで研究チームは、肥満モデルマウスを用いた実験を行い、この仕組みを明らかにすることを目指しました。まず生体内イメージング装置で、摂食状況により中性脂肪を合成する経路を制御している遺伝子SREBP-1を肝臓内で可視化し、観察しました。
すると、絶食時に肝臓核内でSREBP-1のプロモーターに、脂肪細胞の分化と関わっているタンパク質KLF15を含んだ複合体が形成され、これが転写抑制因子を呼び込み、SREBP-1が転写されていく経路のスイッチをオフにすることが分かりました。
また摂食後では、同じKLF15を含む複合体から、KLF15がなくなり、転写抑制因子が転写促進因子と入れ替わり、逆に転写のスイッチをオンにすることが判明、この作用で中性脂肪合成が促進されることを突き止めました。
さらに肥満モデルマウスの肝臓を調べると、KLF15の発現自体が低下していることが確認され、これを増強させると、血中の中性脂肪値が下がり、高脂血症状態が改善することも分かったのだそうです。
研究チームでは、今回の研究によって、摂食行動と結びついた肝臓での脂肪合成における抑制と促進のスイッチ切り替えに関するメカニズムが明らかになったほか、深い関与のあるタンパク質KLF15は治療の観点からも有効性があることが分かったとしています。今後この知見は、2型糖尿病や肥満症、脂質異常症などの新たな治療法開発につなげられる可能性があり、さらなる研究と応用が期待されます。

Cell Reports : KLF15 Enables Rapid Switching between Lipogenesis and Gluconeogenesis during Fasting
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