近年、新たな治療法や薬を開発したり、疾患の詳細不明部分に関する研究を行ったりするうえで、臓器の構造や大きさ、病理発生の状態などが人間に近いため、モデル動物としてブタが注目されています。こうした傾向を受け、徳島大学先端酵素学研究所・初期発生研究分野の竹本龍也助教と、生物資源産業学部の音井威重教授らの研究チームは、研究目的に合う遺伝子改変ブタを簡単に作製するための新手法を確立し、15日に発表しました。
体細胞クローン技術が不要!
これまで病態を再現したものなど遺伝情報操作を行ったブタを作製するには、体細胞クローン技術を用いるのが一般的で、体細胞に遺伝子改変を行った後、遺伝子改変クローン胚を作製、それらを受胚ブタへ移植することで作られており、高度な技術と時間を必要としていました。またこうした手法の場合、作成効率も著しく低いという問題点がありました。
近年になって、ゲノム編集技術が進展し、これを用いてさまざまな動物種での遺伝情報操作が可能になっています。ゲノム編集動物の作製には、受精卵段階でゲノム編集を引き起こす分子であるCas9・ガイドRNAを受精卵内に入れなければなりません。
このため、マウスや魚類などでは、ガラスキャピラリーを用いて分子を受精卵へ直接入れるインジェクション法が用いられていますが、ブタの受精卵は他の動物種の受精卵に比べ、多量の脂肪を含むためにこのインジェクション法を用いたゲノム編集が技術的に困難で、こうした手法での作製も難しいとみられてきました。
今回、研究チームでは、電気によって卵細胞を囲む膜に一時的に穴を開け、ゲノム編集を引き起こす分子をブタ受精卵に導入することに世界で初めて成功、この手法で特定のゲノム編集ブタを作製することにも成功しました。
糖尿病やがんなどの治療法開発に期待
研究チームが確立したのは、遺伝子を切るCas9と、切る部分をガイドするRNAを含んだ溶液に、ブタの受精卵を入れて電気を流すことで、受精卵の核へとこれらを導入する「受精卵エレクトロポレーション法」(GEEP法)という手法になります。
この方法であれば、ブタの遺伝情報を簡便かつ高効率に書き換えることができ、特殊な機器も必要としないほか、高度な作製技術スキルも不要で、作製にかかる時間も大幅に短縮できるという。今回の実験でも、対象とした受精卵すべてで遺伝子改変がなされていることを確認しました。
実験で作製したのは、筋肉の増殖や肥大を抑制しているマイオスタチン遺伝子を操作し、働きを欠損させたブタで、このブタでは通常のブタよりも多くの筋肉が作られていたそうです。なお、この研究成果は「Science Advances」のオンライン版に9月14日付で掲載されました。
研究チームでは、この手法を用いることで、さまざまな人間の病態を模したモデルブタを、多くの研究機関施設で効率よく作製することが可能となり、治療法や創薬研究などの医学における進歩に大きく貢献するものとなるだろうとしています。
とくに糖尿病やがんなどの研究では、活用が進むと見込まれており、これまで以上に画期的な治療法の開発が促進されることが期待されますね。

徳島大学 プレスリリース
http://www.tokushima-u.ac.jp/docs/280915Science Advances : Somatic cell reprogramming-free generation of genetically modified pigs
http://advances.sciencemag.org/e1600803