都会の喧噪から離れ、森林を散策すると、まるで体内が美しいエネルギーで満たされていくかのように、不思議と疲れがとれ、心も落ち着くように感じられる、そうした経験のある方も多いのではないでしょうか。いわゆる“森林浴”の効果ですが、この森林浴をしながら歩く、木々に囲まれて歩く「森林ウォーキング」が、今注目を浴びています。
気持ちよく歩いて糖尿病予防、さらにアディポネクチンも増加
この「森林ウォーキング」、心地よい感じがするというだけでなく、実際に身体にも多くの良い効果をもたらすことが最新の研究で明らかになってきたのです。その成果は「Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine」に掲載されています。
研究は、Qing Li氏らによるもので、19人の40~69歳中高年男性が参加、参加者には長野県の森林環境に2泊3日で滞在して、森の遊歩道を朝11時から12時20分と夕方13時40分から15時の2回、ゆっくり80分をかけ、2.6キロの距離をウォーキングしてもらっています。ちなみにウォーキング中は、ミネラルウォーターのみの摂取としています。研究チームはこのウォーキング前後で参加者の採血などを行い、効果を検討しました。
その結果、パーフォリン、グランザイム、グラニュライシンと呼ばれる3つの抗がんタンパク質が増加し、がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する自然免疫の主要因子、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化していることが確認されました。
また、アディポネクチンという脂肪組織で作られるホルモンも増えていたといいます。このアディポネクチンは、抗炎症作用とインスリンの効果を高める作用をもっており、高く保つと糖尿病の発症予防や進行抑制につながるとされています。一般に、肥満症の患者や2型糖尿病患者では、アディポネクチンの血中濃度が低いことも判明しており、このホルモン量が疾患と深く関わっていることは間違いありません。
都会でのウォーキングよりうれしい効果がたくさん!
このほか、人間はストレスを強く感じ始めると、収縮期血圧や拡張期血圧が上昇し、脈拍が増えるものですが、この森林ウォーキングで20分ごとにモニターしたところ、いずれの数値も低下し、安定的に推移したと報告されています。
ストレスホルモンのコルチゾールも、森林にいる状態のほうが、都市環境にいるときに比べ、減少することが示されており、科学的にみてもストレスが減少、気持ちが落ち着くことが分かりました。
リラックス効果も高く、活力が活発に目覚めているときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経の活動状態を調べた結果は、森林内で、都市環境に比べ、交感神経は活動が抑制され、副交感神経が活発になっていました。
もちろんゆっくり、ある程度まとまった時間を歩くことで、運動療法の観点からみた理想的な有酸素運動としての効果も得られますから、血糖値の低下と継続的に良好な血糖コントロールを実現させていくことにもつながり、糖尿病対策には良いことずくめです。
アディポネクチンの増加と血糖値の低下をリラックス効果とともにもたらし、心身のバランスを整えてくれるほか、血圧の低下や免疫力の向上によるがんや感染症への抵抗力アップまで望めるという「森林ウォーキング」、これからは歩くにも気持ちの良いシーズンとなりますから、あなたも木々のある森林遊歩道を見つけ、始めてみてはいかがですか。
(画像はイメージです)

Evidence-Based Complemenary and Alternative Medicine : Effects of Forest Bathing on Cardiovascular and Metabolic Parameters in Middle-Aged Males
https://www.hindawi.com/journals/ecam/2016/2587381/