世界的な環境保護が叫ばれるようになって久しい今日ですが、環境問題の解消は容易ではなく、開発とのバランスをもった長期的取り組みが必要となっています。そうした環境問題のひとつである大気汚染は、意外なことに糖尿病発症のリスクも高めてしまう可能性があることが、最新の研究で示唆されました。
糖尿病前症者の発症リスクが有意に上昇、ドイツの研究で明らかに
この研究は「Diabetes」誌8月号に掲載されたもので、アウグスブルクにおいて2006~2008年にかけて実施された、ドイツ南部での健康調査に参加した2,944人のデータをもとにしています。
研究を主導したKathrin Wolf氏らは、アウグスブルクおよび隣接する2地域で、参加者らに血液検査や経口ブドウ糖負荷試験などを行い、HOMA-IR(Homeostasis model assessment-Insulin Resistance)と呼ばれるインスリン抵抗性指数や血糖値、インスリン値、HbA1c値、レプチン、炎症の測定などに用いる高感度CRP(hs-CRP)などを測定、住む地域における大気汚染の状況と照らし合わせて、その影響がみられるか検討しました。
なお、レプチンはインスリン抵抗性への関与が深い物質として、測定されており、高感度CRPは慢性炎症や心血管系疾患の診断・管理に用いられ、これも糖尿病との関わりが深いものであるため、項目に挙がっています。
糖尿病前症患者以外での影響は微弱も環境の重要性は判明
解析を行った結果、10μm超サイズの空気中における微粒子物質の濃度が7.9μg/立方メートル増加するごとに、参加者全体の測定データで、HOMA-IRが15.6%、インスリン値が14.5%高くなっていました。
また、二酸化窒素の濃度が上昇すると、HOMA-IR、血糖値、インスリン、レプチンの値も高くなっており、この傾向は糖尿病前症の人でとくに顕著にみられたといいます。一方、すでに糖尿病を発症している患者や、糖尿病前症でもない正常値の健康な人では、影響は軽微だったとされています。またHbA1c値については、いずれの人においても有意な関連性は確認されませんでした。
この結果から研究チームでは、糖尿病前症の状態にある人では、大気汚染の程度と血中の指標物質量の増加に有意な関連性があることが顕著にみられたとし、長期にわたって大気汚染環境にさらされると、糖尿病前症の場合、インスリン抵抗性に影響が及び、2型糖尿病発症のリスクが増大するとしています。
大気汚染が糖尿病発症のリスク要因になるという内容は意外な結果のようですが、こうした環境要素も複雑に絡み合っているところが、糖尿病が現代病となっている所以の一部でもあるのかもしれません。
(画像はイメージです)

Diabetes : Association Between Long-Term Exposure to Air Pollution and Biomarkers Related to Insulin Resistance, Subclinical Inflammation and Adipokines
http://diabetesjournals.org/2016/08/16/db15-1567