近年、さまざまな遺伝子治療研究が盛んに進められていますが、日本国内でも注目の取り組みが多数進行中です。なかには糖尿病治療への応用が期待されているものもあり、将来の治療選択肢となる可能性も出てきています。
世界初の脂肪細胞を用いた遺伝子治療研究を臨床で
そうした研究のひとつといえる、新たな研究が千葉大学医学部附属病院でスタートしました。発表によると、この研究は、世界で初めての脂肪細胞を用いた遺伝子治療で、家族性LCAT欠損症という難病を対象にしています。同院はこの第一種再生医療臨床研究実施について、8月8日に厚生労働省から承認を得たとのことです。
家族性LCAT欠損症とは、身体の余分なコレステロールを取り除くために必要な酵素の一種LCAT(エルキャット)をつくり出す遺伝子に異常を生じる遺伝疾患で、LCATが十分に働けないため、血液中の善玉コレステロールが著しく減少、有害なコレステロールが腎臓や目などに過剰に蓄積し、腎機能障害や角膜混濁、溶血性貧血などの障害を起こしてしまうものです。発症はきわめて稀ですが、根本的な治療法がなく、難病に指定されています。
千葉大学医学部附属病院では、今回この家族性LCAT欠損症の患者から脂肪組織を摘出し、採取した脂肪細胞を体外で培養、遺伝的に欠損しているLCAT遺伝子を治療用遺伝子として導入し、LCAT蛋白をつくり出すように加工したうえで、患者自身に再び移植、正常なLCAT蛋白を持続的に体内へ補充されるようにするという自家移植治療を行うとのことです。
難病の克服から患者の多い糖尿病治療まで、多方面での応用を目指す
ヒトの細胞のなかでも脂肪細胞は、とくに寿命が長く、がん化などの懸念される変化も生じにくいという特徴があります。そこで同院ではこの点に着目し、難病治療のため、任意の蛋白を分泌するように加工した治療用遺伝子導入ヒト脂肪細胞の実用化を目指して研究を進めてきていたのだそうです。
今回の臨床治療研究は、2014年11月25日に施行された再生医療等安全性確保法のもと、千葉大学医学部附属病院と、千葉大学発のバイオベンチャー、セルジェンテック株式会社が、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、進めるものとなっています。
この革新的な治療技術は、今後家族性LCAT欠損症だけでなく、血友病やライソゾーム病など、多くの難病治療法開発につながると見込まれるほか、将来的にはインスリンを補充するかたちで糖尿病治療へも役立てていけると考えられており、今後はそうした方向でさらなる研究・開発を進めていく予定だそうです。
近い将来には、こうした遺伝子細胞医薬品、遺伝子治療による糖尿病の克服も可能になっているかもしれませんね。
(画像はプレスリリースより)

千葉大学医学部附属病院 プレスリリース
http://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/20160823