糖を運ぶタンパク質であるGLUT4は、その機能が阻害されると、2型糖尿病発症につながることが知られています。通常GLUT4は、インスリン刺激時に細胞膜へと移行し、血中のグルコースを細胞内に取り込むことで、血糖値を下げる役割を果たしているのですが、まだ不明な点も多く残されています。
大阪大学の研究チームが新手法で挙動を可視化
このGLUT4に関しては、近年、それに結合する糖鎖がGLUT4の細胞内動態において、どのような役割を果たしているのかに注目が集まっており、これを明らかにすることが2型糖尿病発症メカニズムの新たな解明につながるものとも考えられてきました。
そこで、大阪大学大学院工学研究科の菊地和也教授らは、タンパク質の細胞内における動きを可視化する新手法を開発し、このグルコース輸送を担う糖タンパク質GLUT4に結合した糖鎖の役割を解明することに挑戦、このたび世界で初めて成功したことを発表しました。
研究の成果は、23日に同大学から発表されたほか、「Nature Chemical Biology」に、日本時間の同日付でオンライン掲載されています。
蛍光プローブで光らせて観察、新規治療薬開発への応用にも期待
研究チームが開発した可視化技術は、GLUT4が細胞膜へと移行したときに蛍光プローブで光らせるようにできるというもので、タンパク質と結合することで初めて蛍光強度が上昇する特徴をもっています。またこの蛍光プローブは、細胞膜を透過しないため、細胞膜に出てきたタンパク質のみを標識できるという特徴もあります。
こうした特色により、細胞膜へ移行したGLUT4だけを蛍光プローブにより素早く蛍光標識し、移行の痕跡をはっきりと可視化、検出できるようにすることが可能となったのです。
従来の蛍光タンパク質や免疫染色などの手法では、細胞内にあるGLUT4が細胞膜へいったん移行したことがあるかどうか、その痕跡を厳密に調べることはできなかったのですが、この新手法であれば、痕跡を正確に判別でき、細胞膜に短時間局在した証拠をきちんと記録することができるようになりました。
そこでこの技術を活かし、研究チームは、GLUT4の糖鎖形成を阻害したときと、糖鎖が欠失したときのGLUT4の細胞内動態に及ぼされる影響について詳しく観察し、調べを進めたといいます。
その結果、糖鎖に以上のあるGLUT4は細胞膜へ移行するものの、そこにとどまることはなく、細胞の中へ戻っていくことが確認されました。よって、糖鎖がGLUT4を細胞膜に引き留める役割を果たしていることが明らかになり、これまで不明だったGLUT4の細胞膜における局在化メカニズムの一端が示されたといえます。
研究チームでは、この細胞膜における局在維持に関わる仕組みの破綻が、血糖値を低下させる仕組みを働かなくすることとつながっているため、2型糖尿病発症の原因になる可能性があるとし、今後のさらなる研究進展によって、2型糖尿病発症メカニズムの全容解明と新規治療薬の開発へつながると期待される成果だとしています。
(画像はプレスリリースより)

大阪大学 プレスリリース
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/20160823_1Nature Chemical Biology : Fluorogenic probes reveal a role of GLUT4 N-glycosylation in intracellular trafficking
http://www.nature.com/nchembio.2156