近年、高齢者の間で糖尿病と認知症を併発するケースが増加しており、血糖コントロールがうまくいっていないと、脳血管障害を起こしやすく、認知症の発症リスクも高まる可能性が高いといった報告が複数提出されるなど、注目を集めるものとなっていますが、新たな研究結果として、糖尿病が脳の海馬の萎縮に影響を与えるとする報告がなされ、話題になっています。
記憶を司る海馬が萎縮、久山町の高齢者住民における調査で判明
この研究は、九州大学大学院衛生・公衆衛生学分野の研究チームによってなされたもので、その成果は、専門誌「Diabetes Care」オンライン版に掲載されています。
研究チームは、まず2012年に、福岡県久山町に居住する65歳以上の高齢者1,238人を対象に、頭部MRIを用いて脳の容積総量(TBV)と、頭蓋内容積(ICV)、そして海馬の容積(HV)の測定を行いました。そして、糖尿病との関連性を調べるべく、潜在的な関連する他の因子を調整した上で、世界的に用いられている脳萎縮の指標や海馬萎縮の指標を用いて、解析・検討を進めました。
食後2時間の血糖値が有意に関連
この研究では、対象となった住民のうち23%にあたる286人が糖尿病の患者でした。糖尿病患者と、非糖尿病患者で指標を比較し、萎縮状態について分析したところ、糖尿病患者でより脳や海馬の萎縮が進んでいることが明らかとなり、また、とくに空腹時血糖値ではなく、食後高血糖のマーカー、食後2時間における血糖値の高さがその度合いと有意に関連していることが判明したとされています。
さらに、糖尿病と診断された時期がより早く、患っている期間が長かった被験者において、海馬の萎縮が進みやすい傾向があることも確認されました。
海馬は大脳辺縁系の一部で、記憶や空間学習能力に関わっているとされる部分です。アルツハイマー病における最初の病変部位としても知られている部分で、長期的な心理的ストレスなどでも萎縮することが分かっていますが、さまざまなところにある萎縮のリスク因子を減らすことが認知症の予防にもつながると考えられています。
研究チームでは、今回の成果から、糖尿病は海馬萎縮のリスク因子のひとつであるといえ、患者がその萎縮リスクを低減する、ひいては認知症を予防するには、食後の高血糖状態を是正し、適正にコントロールしていくことが鍵になる可能性があると結論づけました。
(画像はイメージです)

Diabetes Care : Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly Japanese : The Hisayama Study
http://care.diabetesjournals.org/2016/07/01/dc15-2800