糖尿病性網膜症は、血液中の糖分により毛細血管が痛んでいく糖尿病の合併症としてみられる代表的なもので、この症状によって網膜の中心部、視力へ大きな影響を与える黄斑部に浮腫が生じる糖尿病黄斑浮腫と合わせ、糖尿病患者における失明の主因となっています。これらは糖尿病のどの病期においても起こりうる進行性の眼疾患であり、深刻な合併症のひとつといえるでしょう。
失明・視力障がいのリスクだけではない!精神衛生にも大きな影響
重度の糖尿病性網膜症や糖尿病黄斑浮腫が、失明や視力障がいをもたらしうることは、直接的なリスクとしてこれまでにも理解されてきましたが、この合併症を発症すると、さらにうつ病や不安症といった症状も招きやすくなることが、メルボルン大学のGwyneth Rees博士らの研究によって明らかになりました。この結果は、7日付の「JAMA Ophthalmology」オンライン版に掲載されています。
研究チームは、中央値で13年糖尿病を患っている患者519名を対象に、合併症としての眼疾患の発症と、精神衛生面に及ぼされる影響について調査を行いました。被験者に対しては、糖尿病性網膜症、および糖尿病黄斑浮腫の進行度や重症度を特定すべく、包括的な眼の検査と視力検査を実施、そしてうつ病や不安の症状に関するスクリーニング検査も実施しています。
重度の糖尿病性網膜症の進行抑制はうつ病予防にも有効となる可能性
発表された報告では、検査の結果を評価したところ、うつ病について陽性判定を受けた患者は80人で、被験者全体の15%にあたり、不安症の陽性は118人に認められ、全体の23%が該当していたとされています。
この結果について、さらに多様な因子を考慮してこれらの影響を調整し、解析し直すと、糖尿病性網膜症における無症状の非増殖性ステージとされるNPDRの進行した状態や、症状の前兆となる増殖性ステージ、PDRが、うつ病の症状発現と独立して結びつけられることが判明したそうです。
うつ病や不安症の病歴は61%でうつ病の兆候発現に影響を及ぼしており、うつ病の兆候がみられた患者群全体の19%で、進行したNPDRまたはPDRの関与が認められてもいます。一方で今回の研究では、糖尿病黄斑浮腫とうつ病症状とが直接的に結びつけられるようなデータは得られず、この間の関連性は認められていません。
研究チームではこうした結果を受け、糖尿病性網膜症の進行したPDRは中程度、または深刻な視力障がいを引き起こすほか、糖尿病黄斑浮腫となっている場合を除いて、糖尿病患者におけるうつ病を発症させる単独のリスク要因ともなっていることが明らかになったとしています。
よって、糖尿病性網膜症が失明や視力障がいのリスクとなるだけでなく、精神衛生面でも悪影響をきたす可能性が高いと結論づけ、網膜症の進行を抑制することが、患者のうつ病予防にも有効となりうるとの見解も示しました。
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JAMA Ophthalmology : Vision-Threatening Stages of Diabetic Retinopathy Associated with Higher Risk of Depression
http://media.jamanetwork.com/news-item/