ペットとしてだけでなく、犬は私たちにとって欠かせないパートナーであり続けてきました。盲導犬などもそのひとつのかたちですね。こうしたパートナーとして活躍する犬に、糖尿病探知犬というものもいます。
なぜ低血糖発作が分かる?英研究がひとつの可能性を提示
糖尿病は、高血糖状態が続く病気ですが、血糖を下げる薬やインスリンを使用した結果、血糖が下がりすぎる、低血糖を起こすこともあります。低血糖状態はいつ起こるか分からず、発汗や手足の震え、めまいといった症状に始まり、深刻な場合、意識障害を引き起こしたり、昏睡状態に陥ったりするため、命の危険を生じることもあるのです。
とくに1型糖尿病の患者などで急激に血糖が低下し、意識障害を生じた場合、患者自らが助けを求めることも難しくなります。そこで活躍するのが特別な訓練を受けた糖尿病探知犬なのです。欧米では専用の訓練所も整備されており、数多くの糖尿病探知犬が患者を低血糖による命の危険から救ってきています。
しかし、なぜ糖尿病探知犬は低血糖状態を感知し、周囲に知らせることができるのでしょうか。犬は非常に優れた嗅覚をもっていますから、これによって異変をとらえているのだろうということは予測されますが、彼らが何を根拠に異変を認識しているのか、その詳しい仕組みについては、これまでよく分かっていませんでした。
その仕組みの一端を明らかにするひとつの研究が、「Diabetes Care」7月号に掲載されています。
Isopreneという物質をとらえて危険を察知
この研究は、Mark L. Evans教授らケンブリッジ大学のチームによってなされたもので、犬は低血糖症になった1型糖尿病患者の呼気に含まれる、Isopreneという物質を嗅ぎ分けている可能性があるとしています。
チームはまず、呼気に含まれる何らかの化学物質を犬が嗅ぎ分けているのではと仮説を立て、予備研究として中央値で年齢46歳、病歴23年の1型糖尿病患者である8人の女性の低血糖を生じた際の状態について調べました。そうして得られたデータを質量分析にかけ、詳細に検討したところ、呼気中に含まれるIsopreneの量が、低血糖時には有意に上昇していることが判明したのです。
人間がこのIsoprene量の増加をとらえることはおよそ不可能ですが、犬の嗅覚をもってすれば異常をとらえることができると考えられるため、特別なトレーニングを受けた探知犬であれば、Isoprene量の増加を察知することは難しくないようです。
Evans教授らによると、Isopreneは、コレステロール合成の際に生み出される副産物ではないかと推測されるものの、なぜ糖尿病患者が低血糖発作を発現したとき、その呼気における量が増大するのかは不明であるといいます。
研究チームでは、今回の結果を受け、呼気中のIsoprene量に注目することが、低血糖症の検出を含む糖尿病における血糖値の変化をモニタリングし、適切にコントロールする非侵襲的な新しい手段になりうると指摘しています。
今後、対応する機器などが開発されれば、より身近に呼気の測定による簡便なチェックや低血糖リスク回避も実現されるかもしれません。
(画像はイメージです)

Diabetes Care 7月号 : Exhaled Breath Isoprene Rises During Hypoglycemia in Type 1 Diabetes
http://care.diabetesjournals.org/content/39/7/e97