糖尿病患者では、心血管系疾患のリスクが大いに高まり、予後を決めてしまうものともなることから、その治療管理をより適切に行うことが非常に重要です。今回そうした観点で、1型糖尿病患者で冠動脈多枝病変を生じている場合の治療に関する新たな研究報告がなされました。
血行再建が必要な場合、PCIかCABGか
研究はThomas Nystrom氏、Martin J. Holzmann氏らのグループによってなされたもので、スペイン・バルセロナで開催された欧州心臓病学会(ESC 2017)で発表されたほか、詳細をまとめた論文が「Journal of the American College of Cardiology」のオンライン版に8月26日付で掲載されています。
研究グループでは、観察コホート研究として、1995年~2013年までにスウェーデンで初回の血行再建術を受けた全1型糖尿病患者を対象とし、同国のWebシステムを用いた治療法の推奨・評価を行う「SWEDEHEART」の記録、スウェーデン全国糖尿病登録簿、スウェーデン国民患者登録簿のデータをもとに、患者の特性や結果に関する情報を収集しました。
そして、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)を比較するため、全死因および冠状動脈性心疾患による死亡率、心筋梗塞、再発血行再建術、脳卒中、心不全といった項目に関し、交絡因子によるデータ調整を行った上でのハザード比を推定しています。
PCIの方が冠動脈性心疾患死亡率や心筋梗塞などでリスク高
取得したデータには、冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者683人と、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の処置を受けた患者1,863人が含まれていました。平均10.6年の追跡期間中に、CABG群では53%が、PCI群では45%が死亡していたそうです。
結果に影響を与え得る交絡因子を考慮し、データ調整を行った上で解析したところ、PCI群の全死因による死亡率は、CABG群に比べたハザード比で1.14と同程度のリスクになりました。しかし、冠動脈性心疾患による死亡率はハザード比1.45と有意に高くなっていました。
また心筋梗塞の発現についても、ハザード比で1.47と、PCI群の方で有意にリスクが高くなっています。さらに再発による再びの血行再建術実施では、ハザード比5.64と高いリスクが確認されました。一方で脳卒中や心不全については、CABG群とPCI群で、大きなリスクの差はみられなかったと報告されています。
これらの結果から研究グループでは、1型糖尿病患者の冠動脈多枝病変に対する初回血行再建術としてのPCIとCABGを比較すると、PCIの方がより冠動脈性心疾患による死亡率や心筋梗塞、再発の血行再建術の発現リスクが高いことが判明したとし、こうしたケースではCABGを選択することが望ましい可能性が高いと指摘しました。
(画像は写真素材 足成より)

Journal of the American College of Cardiology : PCI Versus CABG in Patients With Type 1 Diabetes and Multivessel Disease
http://www.onlinejacc.org/