2型糖尿病との関連もきわめて強い肥満は、さまざまな疾患のリスク要因となるものです。肥満の原因には、食べ過ぎや運動不足がありますが、それ以外に遺伝的な影響も大きいことが知られています。しかし遺伝要因が体重の個人差をもたらす生物学的メカニズムについては、未だ十分に解明されていません。
理研らの研究グループが肥満に関わる疾患や細胞を同定
こうした中、理化学研究所統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、秋山雅人リサーチアソシエイトらの共同研究グループと、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長ら、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構の清水厚志部門長代理ら、国立がん研究センター社会と健康研究センターらは共同で、日本人約16万人の遺伝情報を用いた大規模なゲノムワイド関連解析と、日本人約1.5万人による再現性の検証、欧米人約32万人との民族横断的解析を実施し、体重調節に関わるヒトゲノム上の遺伝的変異を同定することに成功しました。
12日に理化学研究所らから発表され、研究成果をまとめた論文は「Nature genetics」オンライン版に9月11日付で掲載されています。
これまでに、世界では最大約34万人を対象としたゲノムワイド関連分析が行われ、体重に影響すると考えられる100程度の遺伝子変異は同定されていますが、これら過去の大規模研究は主な対象が欧米人となっており、ゲノム情報は集団によって異なることから、今回の日本人を対象とした研究は、新たな知見をもたらすものになるとみられます。
研究グループは、まずバイオバンク・ジャパンに参加した日本人約16万人の遺伝情報を用いて解析を行い、体重に関連する遺伝マーカーの検索を行いました。そして、ゲノムワイド関連解析とは独立した東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査もしくはJPHC Studyに参加した日本人集団約1.5万人の遺伝的変異情報を理化学研究所で測定し、体重との関連が示唆されたマーカーの再現性を評価したそうです。これにより、日本人の体重に影響すると考えられる85の遺伝的変異を同定しました。85のうち51領域は、今回初めて発見されたものです。
さらに約16万人の日本人における解析結果と、約32万人の欧米人での結果を、民族間での違いを考慮したメタ解析で統合分析したところ、170の遺伝的変異が同定されました。61領域が新たに発見されたもので、日本人単独での解析により同定された領域とあわせると、これで体重に影響するとみられる193の遺伝的変異が特定されたことになります。
糖尿病も生まれつきの太りやすさなどと関連
また、ゲノム上の遺伝子の働きをコントロールし、オン・オフを切り替えるエピゲノム情報とあわせ、遺伝子情報の解析を行ったところ、アクティブエンハンサーの組織・細胞型特異性が最も高くなっていることが確認され、その上で体重変動に関わる遺伝的変異は、既に知られていた脳(中枢神経系)細胞だけでなく、免疫系細胞や脂肪組織のアクティブエンハンサーに有意に集中していることを明らかにすることができました。
さらに詳しい解析の結果、免疫系細胞の中でも、とくにBリンパ球の遺伝子調節領域に変異が集まっており、また体重の個人差に影響する遺伝要因は、ヒト血液中のリンパ球数に影響を及ぼす遺伝要因と一部共通していることが統計学的に示されたため、体重の個人差に関する要因の一部は、Bリンパ球内での遺伝子発現量調整と、リンパ球数の量的な調整に関係していると考えられています。
そして、これまでに理化学研究所で実施した33の疾患を対象とするゲノムワイド解析と、今回の結果をもとに遺伝学的相関を評価、生まれもった太りやすさや痩せやすさが発症に影響するかどうかを検討しました。
その結果、9つの疾患で体重と遺伝的な相関があると判明、2型糖尿病や心筋梗塞などの心血管系疾患に加え、骨や関節の病気である後縦靱帯骨化症、思春期突発性側弯症、統合失調症、免疫やアレルギーが関与する関節リウマチ、気管支喘息などが、太りやすさ、痩せやすさと関連のあるものと分かったそうです。
研究グループでは、痩せ型の人は遺伝的に関節リウマチや思春期突発性側弯症、統合失調症を発現するリスクが高く、肥満の人は2型糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症といった心血管系疾患に加え、気管支喘息や後縦靱帯骨化症のリスクが高いとみています。今後は今回得られた知見が、疾患への効果的な予防対策の実施に活かされることが望まれます。
(画像はプレスリリースより)

理化学研究所/日本医療研究開発機構/東北大学東北メディカル・メガバンク機構/岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170912_1/Nature genetics : Genome-wide association study identifies 112 new loci for body mass index in the Japanese population
http://www.nature.com/