日本をはじめとした先進国などでは、超高齢社会に突入しつつあり、糖尿病の患者さんや寝たきりの患者さんが増加の一途をたどっています。こうした糖尿病や寝たきりの患者さんでは、糖尿病性皮膚潰瘍や、長期臥床に起因する褥瘡など、難治性の創傷がしばしば生じますが、これらに対する有効な治療薬はいまだ存在しません。
国際的産学連携で創薬研究開発をスタート!
糖尿病性皮膚潰瘍などが悪化すると、壊死や感染により四肢切断を行わねばならなくなるケースも多く、その後の健康やQOLに著しい影響を及ぼすところとなってしまいます。
こうした状況を打開するため、順天堂大学大学院医学研究科生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦教授の研究グループと、英国の創薬会社であるHepatares Therapeutics, Ltd. (以下、Heptares社)は、共同で創傷治癒に関与するBLT2を標的とした新規創薬研究開発プログラムを、10月より開始することを決めました。
順天堂大学大学院の医学研究科生化学・細胞機能制御学では、研究において生理活性脂質受容体の単離やリガンド同定を進め、遺伝子改変マウスや受容体拮抗薬を用いた、新たな創薬標的分子とその対象疾患を見出してきています。
今回の糖尿病性皮膚潰瘍などに関しては、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の1種であるBLT2受容体が、皮膚の最も外側に位置する表皮を構成する主細胞、ケラチノサイトに発現し、BLT2を活性化する化合物がマウスの皮膚創傷治癒を促進することを発見しました。そしてBLT2作働薬が、難治性皮膚潰瘍の新規治療薬となる可能性をすでに指摘しています。
それぞれの知見と強みを活かして難治性創傷の新薬を
一方のHeptares社は、これまで、さまざまなGタンパク質共役型受容体に対する創薬研究に関し、受容体結晶構造解析と独自のアルゴリズム「StaRテクノロジー」を用いた分子モデリングの手法をとることで、さまざまな疾患の新規創薬標的と、その候補薬剤を設計することに成功してきた実績があります。
今回、こうしたHeptares社の産学連携によるシーズ発掘過程で、順天堂大学のBLT2研究が見出され、1年に及ぶ予備的検討と討論がなされた結果、それぞれの強みを活かした共同研究を行う運びとなったとされています。
共同研究ではまず、順天堂大学横溝教授の研究グループが発見した生理活性脂質受容体BLT2の作働薬候補を、Heptares社が「StaRテクノロジー」によって分子モデリングし、数百種類の候補化合物を選定します。
次にそれらの活性を順天堂大学が測定し、人工的に発現させた遺伝子組み換え細胞を用いた実験と、候補化合物のなかから絞り込まれた有望な少数の化合物によるマウス創傷治癒モデルを用いた実験を実施、難治性皮膚創傷に対する治癒効果を判定する予定となっています。
これによって、ケラチノサイトに作用する初の皮膚潰瘍治療薬開発が実現できる可能性が高いほか、Gタンパク質共役型受容体の立体構造を分子モデリングして薬剤開発につなげるという、新たな創薬アプローチ基盤を創出することができるのではないかと考えられています。
有効な治療薬がなく、難治性とされる糖尿病性皮膚潰瘍や褥瘡を効果的に治療できる新薬が生み出される可能性のある共同研究として、今後の取り組みに期待が集まります。
(画像はプレスリリースより)

学校法人順天堂によるプレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000021495.html順天堂大学 プレスリリース
http://www.juntendo.ac.jp/news/20170901-01.html