肥満と糖尿病は密接な関係にあり、肥満を伴う2型糖尿病患者の数も日本を含めた世界で増加の一途をたどっています。こうした中、群馬大学生体調節研究所分子糖代謝制御分野の福中彩子助教と藤谷与士夫教授、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の綿田裕孝教授、徳島文理大学薬学部病態分子薬理学の深田俊幸教授らの研究グループが、脂肪細胞の褐色化を抑制するブレーキ因子を発見、食べても太りにくい体質を開発することができる可能性を見出しました。
亜鉛トランスポーターZIP13が調節因子
群馬大学生体調節研究所が8月31日に発表したところによると、今回研究グループは亜鉛トランスポーターのひとつであるZIP13が、脂肪細胞の褐色化にブレーキをかける調節因子であることを突きとめたとされています。この研究成果をまとめた論文は、「PLoS Genetics」に8月30日付で掲載されました。
人間の身体の中には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類があり、いずれも脂肪を蓄える能力をもつものの、生理的な役割は対照的であり、白色脂肪細胞が余分なエネルギーを中性脂肪として貯蔵するのに対し、褐色脂肪細胞はミトコンドリア内膜にある脱共役タンパク質UCP1を介し、脂肪分解から得たエネルギーを熱に変える消費に関わっています。
よって、褐色脂肪細胞が増えると太りにくくなるのですが、近年、白色脂肪組織中に寒冷刺激などで誘導される褐色脂肪に似たベージュ脂肪細胞が発見され、この細胞を増加させると、肥満や糖尿病の改善につながると考えられるようになりました。
また、生体の恒常性維持においては、亜鉛が不可欠であることは古くから知られ、最近の研究で亜鉛の輸送に関わる亜鉛トランスポーターも同定されました。そしてこの亜鉛トランスポーターを介する細胞間、臓器間あるいはオルガネラ間の亜鉛の流れが、生命活動に深く関わるシグナル伝達システムの一端を担うことが示されています。
これらから亜鉛シグナルの健康および疾患への関与に高い関心が集まっていますが、糖尿病などの生活習慣病における亜鉛や亜鉛シグナルの役割、分子メカニズムは依然ほとんど明らかになっていません。そのため研究グループでは、この解明を目指して取り組みを進めてきていました。
ZIP13標的の薬剤でエネルギーを消費するベージュ脂肪細胞を誘導
これまでの研究で、亜鉛トランスポーターのひとつであるZIP13を欠損したマウスや、ZIP13の機能喪失型変異を有するエーラス・ダンロス症候群の患者では、脂肪量が少ないという報告がなされていたことから、研究グループでは脂肪組織におけるZIP13の役割に着目、解析を試みました。
その結果、ZIP13欠損マウスでは、皮下脂肪組織におけるベージュ脂肪細胞が増加し、エネルギー消費量が増えていることを発見、この欠損マウスの場合、高脂肪食を与えても、太りにくいことを確認することもできたそうです。
ZIP13は、一般にゴルジ体から細胞質内へ亜鉛を輸送するタンパク質として知られていますが、今回の研究でZIP13を介した亜鉛の流れが、脂肪細胞の褐色化抑制に必要であり、このブレーキ役になっていることが明らかとなりました。
さらに詳細な解析を行ったところ、ZIP13を欠損した細胞では、ベージュ脂肪細胞の分化過程で、C/EBP-βタンパク質の蓄積が持続的に生じ、脂肪細胞の褐色化進展において非常に重要な働きをみせるPRDM16タンパク質が増加、脂肪細胞が褐色化しやすくなる要因になっていることが強く示唆される結果を得ることもできています。
これらの結果から研究グループでは、ZIP13を標的として、これを特異的に阻害する薬剤を開発すれば、エネルギーを貯める皮下白色脂肪組織内に、エネルギーを消費するベージュ脂肪細胞を誘導することが可能になり、肥満や糖尿病に対する新規治療薬として有効に使える可能性があるとしています。
(画像はプレスリリースより)

群馬大学生体調節研究所 プレスリリース
http://www.imcr.gunma-u.ac.jp/PLoS Genetics : Zinc transporter ZIP13 suppresses beige adipocyte biogenesis and energy expenditure by regulating C/EBP-β expression
http://journals.plos.org/