糖尿病の三大合併症として、腎症、神経障害と並ぶ存在になっているのが、糖尿病網膜症です。血糖コントロール不良な状態が続くと、網膜をはじめとする眼組織にさまざまな障害が発生することが知られ、この網膜症によって失明に至るケースは少なくありません。
RUNX1遺伝子が重要な働きをみせることを確認
この糖尿病網膜症は、「単純」、「増殖前」、「増殖」と3つの病期に分けられますが、増殖糖尿病網膜症(PDR)では、広く出血する硝子体出血や増殖膜が確認され、これによる牽引性の網膜剥離、難治性の血管新生緑内障の発現などがみられます。
今回この増殖糖尿病網膜症の発症に関し、重要な役割を担う遺伝子の同定に成功したとする研究報告が、「Diabetes」オンライン版に4月11日付で掲載されました。この研究はJonathan D. Lam氏らのグループによるものです。
研究グループでは、転写物分析により、PDR患者のヒト線維性膜(FVM)から取り出したCD31+血管内皮細胞において、アップレギュレートされた遺伝子として、Runt-related transcription factor 1(RUNX1)遺伝子を同定することに成功しました。
異常を検知するマーカーとして、また標的として有用か
ヒト網膜の微小血管内皮細胞を用いた研究では、高血糖に対応するかたちでRUNX1 RNAと関連タンパク質の増加が確認されたほか、このRUNX1遺伝子を阻害すると、網膜微小血管内皮細胞の移動や増殖、新生血管形成が抑制されることが判明しています。
RUNX1遺伝子に対する免疫組織の化学的染色を実行すると、患者から取り出したPDR線維性膜、および酸素誘発性網膜症(OIR)を有するマウスの網膜の血管新生房血管における反応性が確認され、RUNX1遺伝子のアップレギュレーションが網膜血管新生の異常を示すものであることが分かりました。
さらに、Ro5-3335小分子においてRUNX1遺伝子を阻害すると、OIRでの異常な網膜血管新生を抑制、新血管房を有意に減少させられることも判明し、このRUNX1遺伝子を標的とする治療アプローチの可能性も示唆される結果を得ています。
研究グループでは、これらの研究結果から、RUNX1遺伝子の発現に注目することで、網膜血管新生の異常を示すマーカーとして利用できる可能性があるほか、この遺伝子を標的とした病態の進行抑制も可能となりうるとまとめています。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes : Identification of RUNX1 as a Mediator of Aberrant Retinal Angiogenesis
http://diabetes.diabetesjournals.org/