今日、糖尿病を患う人は世界でも数多く、糖尿病だけでなく、その他のさまざまな疾患と併発している患者さんも多くみられるようになってきました。2つ以上の疾患を有する場合、糖尿病単独の治療、その他の疾患における通常治療のどちらとも異なるアプローチが必要になるケースも多く、特有の工夫が必要となることから、糖尿病合併患者の増加にあわせ、最適な治療法を探る研究も進展しています。
ドセタキセルとメトホルミンを併用しても有意な効果上昇はみられず
そうした研究のひとつとして、糖尿病を合併し、遠隔転移のある内分泌療法抵抗性前立腺がん患者の治療法を検討した最新の研究結果が、「The Journal of Urology」4月号に掲載されました。
研究を行ったのは、Michelle J. Mayer氏らのグループです。現在内分泌療法抵抗性前立腺がん患者への化学療法として、まず生存期間延長に有効とされ、用いられているものにドセタキセルがありますが、この療法への感受性を高めるために、特定の薬剤を併用することがしばしばあり、乳がんや肺がん、子宮内膜がんの患者などでは、メトホルミンが有用で生存期間を延長できること、また乳がん・結腸がんではメトホルミンがドセタキセルのがん細胞における有効性を増強させることが判明しています。
そこで研究グループでは、いまだ効果の検証が行われていない前立腺がんについても同様の効果が期待できるか、糖尿病を合併する転移性の内分泌療法抵抗性前立腺がん患者で、ドセタキセルとメトホルミンの併用について、検討を行いました。
メトホルミン以外の薬剤が必要か
研究グループでは、まずオンタリオ州における複数の医療管理データベースのデータから、遠隔転移性のある内分泌療法抵抗性前立腺がんと診断され、ドセタキセルでの化学療法治療を受けた65歳以上の男性患者を抽出、糖尿病の有無や進行状態、抗糖尿病薬の使用といった項目でグループ分けを行いました。
その上で、Kaplan-Meier生存曲線や対数ランク試験、多変量Coxハザード比解析モデルといった手法から、ドセタキセルとメトホルミンを併用した場合の、生存率・生存期間について調べています。
分析の結果、生存曲線では、ドセタキセルとメトホルミンを併用しても、前立腺がん特異的生存率、全生存率の両方で、有意な効果はみられず、生存期間を延長させることにはつながらないことが判明しました。
ハザード比モデルの解析結果でも、ドセタキセルとメトホルミンの併用による前立腺がん特異的生存率は、ハザード比0.96、全生存率でハザード比0.94となり、有意な効果は確認できなかったと報告されています。
これらの結果から研究グループでは、遠隔転移性の内分泌療法抵抗性前立腺がんを有する糖尿病患者の場合、ドセタキセルの化学療法中におけるメトホルミン投与が、全生存期間を有意に改善することはなかったとし、こうした前立腺がんでは、メトホルミンが有効な化学療法感受性増強剤として機能しない可能性があると指摘しました。
(画像は写真素材 足成より)

The Journal of Urology : The Effect of Metformin Use during Docetaxel Chemotherapy on Prostate Cancer Specific and Overall Survival of Diabetic Patients with Castration Resistant Prostate Cancer
http://www.jurology.com/