冠動脈疾患の治療では、冠動脈バイパス術やバルーン血管形成術のほかに、ステント留置が行われることがしばしばあります。ステントと呼ばれる金属チューブを挿入して、血管を開かせておくもので、急性期の仕上がりの良さと急性冠閉塞に対する防止効果の高さから支持されていますが、かなりの頻度で再狭窄が発生し再び治療を行わなくてはならないという問題点があります。
再狭窄を防ぐ薬剤溶出型ステントの留置後の処置療法に糖尿病の有無が影響
よって、この再狭窄発生を防ぐことが次の課題となり、そこに大いに寄与すると考えられているものに薬物溶出型ステントというものがあります。これは金属でできた冠動脈ステントの表面に、血管が再び閉塞するのを防ぐ(再狭窄を防ぐ)働きをもった薬剤がコーティングされているもので、これを血管に留置すると、数週間にわたり薬剤が直接血管壁へと溶け出し、より効果的に血管を開かせておくことができます。
一方で、この薬剤溶出型ステントを留置した場合、通常のステント留置よりも血栓が形成されやすいというリスクがあることから、ステント留置を行う経皮的冠動脈形成術(PCI)を施した後、従来よりもより長めに、血栓を予防する抗血小板剤の服薬治療がなされることとなっています。
通常、ここではアスピリンおよびチエノピリジン系抗血小板薬を用いる、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が処置としてなされていくのですが、この処置療法の中断率に糖尿病の有無が関連しているとする研究報告がなされました。内容をまとめた論文は、「JACC:Cardiovascular Interventions」に4月10日付で掲載されています。
早期中断で重大な心血管系イベントリスクが増大
研究を行ったのは、Michela Faggioni氏らのグループで、彼らはステント留置患者における療法パターンを取り扱ったPARIS試験のレジストリをデータとして用い、DAPTの中断率と糖尿病との関連性について検討を行いました。対象となったのは、ステント留置後にDAPTを受けた集団のうちの糖尿病患者1,430人と非糖尿病患者2,777人です。
2年間の追跡調査を実施したところ、この期間における血栓の発現リスクは、糖尿病と有意に関連し、増大していましたが、出血リスクにおいては、糖尿病との関連性がみられませんでした。
1年を超えるDAPTの累積中断率は、糖尿病患者で50.1%であったのに対し、非糖尿病患者では55.4%となり、医師の指示判断に基づく中止がなされることが少ないことから、糖尿病患者で有意に低くなっていました。一方2年間の中断率では、有意な群間差がみられなくなっています。
DAPTが医師の指導のもとで中断・中止された場合では、DAPTが続行されている糖尿病患者の場合と比べ、重大で有害な心血管系イベントの発現リスクに差はありませんでしたが、出血や服薬遵守がなされなくなっていくなど、何らかの要因に阻害されて、DAPTが医師の考える時期よりも早期とみられる段階で中断されてしまうと、糖尿病の有無に関わらず、重大な心血管系イベントの発現リスクが有意に増加していることが確認されました。
これらの結果から研究グループでは、DAPTの中断・停止パターンは、糖尿病の有無によって異なっており、糖尿病患者ではより長期のDAPTが必要とされるケースが多く、1年超の時点では医師の指導によらない中断が少なくなる傾向にあること、一方でまだ必要であるにも関わらず、その他の要因や自己判断でDAPTが早期に中断されると、心血管系リスクが増大することが判明したとしました。
あわせて、長期になりやすいものの、適切な時期まで処置を行い、医師の指導のもとでDAPTを停止すれば、糖尿病を患っていても、DAPTの中止が心血管系イベント発現のリスクを上げる修飾因子として現れてくることはなかったとしています。
(画像は写真素材 足成より)

JACC : Cardiovascular Interventions : Incidence, Patterns, and Associations Between Dual-Antiplatelet Therapy Cessation and Risk for Adverse Events Among Patients With and Without Diabetes Mellitus Receiving Drug-Eluting Stents
http://www.interventions.onlinejacc.org/