近年、糖尿病の病態進行抑制や予防のため、糖質制限食が注目されるようになっています。しかし、この糖質制限食も場合によっては、注意が必要なものである可能性が出てきています。
1型糖尿病患者を対象とした小規模試験報告
糖尿病には、患者数が多く、生活習慣に依存するところの大きい2型糖尿病と、発症例は少ないものの自己免疫性疾患として発現する1型糖尿病があります。このうちの2型糖尿病の場合、糖質の摂取を制限することで食後高血糖を改善でき、急激な血糖上昇を緩和、血糖コントロールを良好にしていけるとされています。
しかし1型糖尿病ではどうなのでしょうか。このことを検討した研究報告が、「Diabetes, Obesity and Metabolism」オンライン版に3月27日付で掲載されています。
研究を行ったのは、A Ranjan氏らのグループで、彼らは1型糖尿病患者を対象に、高炭水化物食(高糖質食)と低炭水化物食(糖質制限食)を摂取した場合の血糖値および心血管系イベントの発現リスクマーカーに関する検討を行いました。
対象となったのは、1型糖尿病を患う10人で、うち4人は女性、持続皮下型のインスリンポンプ投与療法を受けていて、年齢は中央値48歳、HbA1c値は中央値7.0%(53mmol/mol)でした。
脂質やタンパク質摂取の増加が影響か
患者は、それぞれ高糖質食、糖質制限食の群に無作為で割り付けられ、1週間その食事摂取で生活を送りました。研究グループでは、毎週患者らのポンプおよびセンサーのデータを取得し、血液や尿のサンプルも収集しています。
分析の結果、平均センサーグルコース水準はいずれの群でもほぼ同様でしたが、糖質制限食を摂ってもらった群では、高糖質食群に比べ、より頻繁に3.9~10.0mmol/lになり、3.9mmol/l以下となった回数は少なかったこと、グルコース変動はより小さく抑えられていたことが分かりました。
一方で空腹時グルカゴン値やケトン、遊離脂肪酸レベルは、1週間の試験終了時点で、糖質制限食の摂取群の方が高糖質食の摂取群よりも高くなっていたそうです。なお、心血管系イベントの発現リスクマーカーに及ぼされる影響では、有意な差がみられませんでした。
全体として、糖質制限食の摂取群では、平均血糖値に変化をもたらすことなく、正常血糖値内の値を示す回数を増加させ、低血糖の回数を減少させること、高糖質食を摂取するよりもグルコース変動制を小さく抑えられることが分かったと結論づけられました。
今回の研究報告はごく小規模かつ短期間のものであるという限界がありますが、一定の効果が認められました。その一方で空腹時グルカゴン値やケトン、遊離脂肪酸レベルが高くなったように、脂質やタンパク質の摂取が増加して、血糖変動の動きに変化が生じたことが分かるものともなっています。
この血糖変動のタイミングや幅が変化するという点で、糖質制限食が賛否両論となっている可能性があるでしょう。糖尿病では良好な血糖コントロールを行っていくことが何より重要ですから、自己判断による過度な制限を行うといったことは避け、かかりつけ医とよく相談しながら治療していくことが大切でしょう。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes, Obesity and Metabolism : Short-term Effects of Low Carbohydrate Diet on Glycaemic Parameters and Cardiovascular Risk Markers in Patients with Type 1 Diabetes - A Randomised Open-label Cross-over Trial
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12953/full