近年、スマートフォンを中心とするモバイルデバイスは生活に不可欠なものとなり、さまざまなシーンで活躍しています。今後もその活用範囲は広がっていくと見込まれますが、糖尿病患者の血糖値管理、インスリン注入も、将来はアプリを通じてスマートフォンにより制御する時代が来るのかもしれません。
デザイナー細胞を制御し血糖値を監視、必要なインスリンを分泌させる!
4月26日付で公開された「Science Translational Medicine」掲載の論文によると、Jiawei Shao氏、Haifeng Ye氏らの研究グループは、糖尿病マウスにスマートフォンアプリでの遠隔制御が可能なデザイナー細胞を移植、血糖コントロールが良好になるよう、その血糖値変動を常時監視して、必要に応じたインスリンホルモンを分泌させることに成功しました。
このデザイナー細胞は、遠赤光に反応してインスリンホルモンを産生、分泌するように設計されており、研究グループでは、光遺伝学、電気工学、ソフトウエア開発、生物学などを結びつけた手法により、スマートフォンでの糖尿病の半自動化治療を可能とする技術基盤を生み出すことができたとしています。
まず、発光ダイオードのFRL LEDに敏感な反応をみせる遺伝子を用い、細胞の遺伝子操作を行って、ワイヤレスで電源供給される照明の点灯を合図に信号として処理、インスリンホルモンの生成調整が実行できるようにプログラムデザインを行いました。そして、このデザイナー細胞と光源とをヒドロゲルカプセルに埋め込んで、マウスへと移植しています。
アプリで体内も制御、新たな慢性疾患管理のかたちとなるか
一般的なスマートフォン端末で、コントロールボックスを介し、光の強度と持続時間を調整できる仕組みとなっていることから、ヒドロゲルカプセル中のヒトグルカゴン様ペプチド1(shGLP-1)短変異体、マウスのインスリン産生を遠隔操作で促せるデザイナー細胞は、スマートフォンのプログラムやBluetooth対応の血糖値測定デバイスなどにより、その時々のグルコースレベルに応じたかたちで、半自動的に遠隔制御できるようになりました。
報告によると、このデザイナー細胞と光源を積んだヒドロゲルカプセルが、移植糖尿病マウスにおいて、血糖値を数週間にわたり安定的に維持させられることを確認することもできたとされています。
デジタルデバイスによるシグナルと、光遺伝学による知見からデザインされた細胞を組み合わせることで、必要なホルモン産生、代謝反応を活性化させることを可能にし、スマートフォンアプリでの細胞をベースとした半自動治療が実現できることを示した点で、この研究成果は大いに注目されるものになるといえるでしょう。
アプリで血糖コントロールの改善を支援する仕組みや、糖尿病をはじめとした慢性疾患を管理するためのモバイルヘルスケアツールは、活発に開発されていますが、より直接的に細胞を制御し治療するというこの新技術が、慢性疾患の治療スタイルを今後大きく変革するものとなるかもしれません。
(画像は写真素材 足成より)

Science Translational Medicine : Smartphone-controlled optogenetically engineered cells enable semiautomatic glucose homeostasis in diabetic mice
http://stm.sciencemag.org/content/9/387/eaal2298