近年、糖尿病と認知症の間には密接な関係性があると考えられるようになり、糖尿病患者は認知症になりやすく、また認知症になると糖尿病も悪化しやすいことが複数の研究を通じて報告されてきています。認知機能の低下は、繰り返される高血糖の合併症でもあり得るのです。
フィンランドの大規模調査研究でインスリン抵抗性との関連が判明
こうした糖尿病と認知症の発症、認知機能に関する最新の研究報告が、「Diabetes Care」のオンライン版に4月5日付で掲載されました。研究を行ったのは、Laura L. Ekblad氏らのグループで、空腹時血糖値の上昇やインスリン抵抗性と認知機能の関係性について検討しています。
研究グループは、フィンランド全国における住民ベースの大規模健康診断調査データと11年間の追跡調査研究結果から、HOMA-IR(インスリン抵抗性をみる指標)、空腹時インスリン値および血糖値、HbA1c値、hs-CRP(高感度CRP・炎症時に増加する微量のC反応タンパク質を検出する炎症マーカー)の項目と認知機能について分析・検討を行いました。その対象者は3,695人で、ベースライン時の平均年齢は49.3歳、女性が55.5%を占めています。
認知機能については、言語の流暢性や単語リスト学習、単語リストの思い出しにくさといったカテゴリー指標を尺度として用い、評価しました。分析においては多変量線形回帰モデルを採用、既知の認知低下リスク因子に関するデータ補正がなされた上での実行となっています。
インスリン抵抗性、空腹時インスリン値が言語流暢性の機能低下と関連
分析の結果、ベースライン時におけるHOMA-IRが高値でインスリン抵抗性が増大している場合、また空腹時インスリン値が高い場合、言語流暢性の機能における低下がより顕著に発生しており、独立した予測因子であることが認められました。
一方で、これらHOMA-IRや空腹時インスリン値が、認知機能の評価に用いた単語リスト学習や単語リストの思い出しにくさに関するスコアを独立に、有意に予測するものとはいえなかったことも報告されています。
認知テストにおける、インスリン抵抗性と、アルツハイマー病最大のリスク遺伝子とされるアポリポタンパク質Eε4(APOEε4)遺伝子型、動脈硬化など心血管系疾患などの診断・管理に用いられるhs-CRP、2型糖尿病との間に相互作用は認められず、空腹時血糖値とhs-CRPの値では、認知機能との有意な関連性が確認されませんでした。
こうした結果から研究グループでは、インスリン抵抗性や空腹時インスリン値の高さは、成人集団における認知機能の言語流暢性に関する機能低下を予測する因子であることが判明したとし、インスリン抵抗性を増大させないようにすることが、のちの認知機能低下を軽減することにつながる可能性があると指摘しました。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes Care : Insulin Resistance Predicts Cognitive Decline : An 11-Year Follow-up of a Nationally Representative Adult Population Sample
http://care.diabetesjournals.org/