インスリン依存型糖尿病、小児糖尿病などとも呼ばれる1型糖尿病は、自己免疫性の疾患で、体内のリンパ球があやまって活動し、自分自身の膵臓ランゲルハンス島β細胞を攻撃、その大部分を破壊してしまうことで、インスリンが分泌されなくなってしまう病気です。
根絶を目指し、3つの研究課題を助成課題に選定
1型糖尿病を発症すると、インスリンの産生・分泌が行われなくなるため、脳死膵臓移植や膵島移植を受けない限り、生涯にわたって日々インスリンの自己注射・ポンプ注射を行っていかなくてはならなくなります。
こうした1型糖尿病の患者や家族の支援と、疾患の根絶を目指した活動を展開する認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワークは2日、「第11回1型糖尿病研究基金」の研究費助成課題を決定したことを明らかにしました。今回は3件の研究を選定しています。
1件目は、宮寺浩子筑波大学医学医療系助教を代表者とする「1型糖尿病を発症しない動物モデルの確立と発症抑制機序の解明」研究です。助成金は100万円で、9年間の支援が決定しており、前回に引き続いての選出となったことから、同研究へは通算10年継続の助成がなされることとなりました。
この研究では、1型糖尿病を発症しやすい遺伝子をもつモデルマウスを、遺伝子工学的に少し改変し、1型糖尿病を発症しないモデルマウスを作製、このモデルマウスが有する疾患発症抑制のメカニズムを明らかにすることで、発症予防のワクチン開発や進行を抑制させる薬剤の創出などにつなげていくことを目指しています。
日本IDDMネットワークの井上龍夫理事長によると、今回は11回目を迎えた新たなスタートとして、1型糖尿病根絶のため、2025年までの長期継続研究助成をメニューに加えて公募、この研究を第1号対象として選んだそうです。国内ではまだ低い割合にとどまる女性研究者の研究ということもあり、安心して継続的に研究できる基盤を提供したいとの観点からも、同研究が選ばれました。
AIによる膵島分離や治療用遺伝子改変ブタ開発の研究も
2件目は、大田佳宏東京大学大学院数理科学研究科特任教授を代表者とする「膵島分離技術のAIロボットによる標準化」研究です。助成金は100万円で、5年間支援されます。
この研究は、AI(人工知能)を用い、“神の手”とされ、膵島移植での膵島分離技術成功率が世界でも群を抜く、著名な日本のトップ移植医の技術を分析してAIロボットに再現させて、世界一の膵島分離が安定的に実行できるロボットを創出することを目指しています。AIとロボットによって実現される神の手を凌ぐ技術が、世界標準となり、広く1型糖尿病患者を救うものとなることが期待されます。
また、世界に先駆けて先端医療とAIの融合による具体例が日本の研究者によって実践され、確立されるものとなれば、医療に力を入れる国策にも合致するほか、他の難病への応用も進むのではないかと見込まれています。
3件目は、日本IDDMネットワークが早期の臨床実現に向け、研究開発を推進する「バイオ人工膵島移植」と直接的に関連する「糖尿病治療用遺伝子改変ブタの開発」をテーマとする研究です。代表者は、宮川周士大阪大学医学系研究科准教授で、助成金は100万円、1年間の支援となっています。
1型糖尿病における根治治療の方法のひとつである膵島移植は、ドナー不足と免疫抑制剤の必要性が課題です。「バイオ人工膵島移植」は、そうした課題を克服する目的で進められている研究開発で、十分なインスリンを分泌でき、長期にわたって安定的に生着する、炎症反応も最小化できるといった臨床応用可能なレベルのバイオ人工膵島を生み出すことを目標にしています。
助成課題の研究における遺伝子改変ブタは、このバイオ人工膵島を生み出すロードマップ上で必要な、膵島細胞を取り出すもとの医療用ブタになります。これまで日本IDDMネットワークが助成してきた関連テーマの研究者らとの積極的連携により、早期の臨床実現、疾患の根治実現を目指してほしいとの願いから、助成が決定されました。
今後、これら研究から生まれた成果が、多くの糖尿病患者を救うものとなることが期待されます。
(画像はプレスリリースより)

認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク プレスリリース
http://japan-iddm.net/data/pr/IDDMNetworkPR_170501.pdf