糖尿病の主な合併症のひとつに、糖尿病性網膜症があります。この疾患によって、失明にいたる人は少なくなく、ますます増加する世界の糖尿病罹患者、4億2,200万人の実に3人に1人でその影響がみられるともいわれています。
難しい早期発見にディープラーニングが活躍!
糖尿病性網膜症は、放置しておくと失明にいたる深刻な疾患ですが、早期に兆候を発見し、適切に処置を行えば、失明リスクは95%低減させられるともされ、早期発見が何より重要となっています。
しかし現在は、定期的なスクリーニング検査で診断が行われていますが、網膜の特殊な眼底写真による検査でも、この病変を特定することは容易ではなく、十分な訓練と経験を積んだ臨床医でなければ、早期の特定・診断、重症度の評価を正しく行うことが難しいという課題があります。
加えて、こうした検査方法は、手作業で時間や手間も膨大にかかること、糖尿病患者で眼科検診を積極的に受ける人が少ないことなども影響し、処置が可能であったはずの糖尿病性網膜症が放置されてしまって、視力を喪失する人の数がなかなか減らないという事態にもつながっているのです。
こうした現状の問題を解消し、革新をもたらす可能性のある発表が、米IBMによって現地時間の20日になされました。ディープラーニングの手法と画像分析技術を用い、さまざまな眼疾患の診断支援を行うIBM Researchの取り組みの延長にあるもので、難しいとされてきた糖尿病性網膜症の診断と重症度評価を、システムで実行することに成功しています。
世界の患者を救うシステムとなることに期待
メルボルンで開催されているIEEEのシンポジウム「International Symposium on Biomedical Imaging(ISBI)」で発表されたこのシステムは、EyePACSを介して35,000以上の眼の画像データから、網膜血管の損傷を示す微小動脈瘤、出血、滲出液の存在などごくわずかな病変まで識別できるように訓練されており、糖尿病性網膜症の疾患が存在するか否かと、その重症度をわずか20秒程度で特定することができるものとなっています。
重症度は5段階で分類され、客観的な評価として示されることから、幅広い医師が適切な処置を行いやすくなると考えられます。IBMの研究チームは、このディープラーニングと視覚画像分析技術を活かしたシステムで、糖尿病性網膜症患者の病態重症度を86%の精度で特定することに成功したそうです。
評価分類の仕組みには、2つのアナリティクスアプローチを導入しており、畳み込みニューラルネットワークと糖尿病性網膜症に特有の病理・病変を含んだ辞書ベースの学習が組み合わされているといいます。ディープラーニングの仕組みにより、今後さらに学習を重ねることで精度も向上すると見込まれ、より効果的なスクリーニングが可能になっていくと考えられています。
とくに低所得層や発展途上国における患者の場合、専門医の診断を受けることが難しいケースも少なくありません。そうした人々に対しても、このシステムが活用されれば、多くの糖尿病患者を迅速かつ正確に自動スクリーニングし、早期に処置が必要な人を特定して対応できるようになる可能性があります。
もちろん、先進国の医療現場を強力にサポートするものともなるでしょう。糖尿病に起因する失明、視力障害をなくしていくための大きな一歩として、今後のさらなる研究開発と臨床応用が期待されます。
(画像はプレスリリースより)

IBM プレスリリース
http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/52110.wssIBM Research Blog 該当記事
https://www.ibm.com/