糖尿病患者における合併症では、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害がよく知られていますが、このほかにも多くのリスクが存在し、なかでも足病変の重症化は近年注意すべきものとして、取りあげられることが多くなっています。
足病変重症化による下肢切断のリスクをスタチンが低減
糖尿病性の神経障害が進行すると、足の感覚が鈍くなり、傷などにも気がつきにくくなります。それとともに高血糖で抵抗力が弱まるため、感染症にかかりやすくなり、潰瘍や変形など足病変が起きやすくなるのです。高血糖による動脈硬化で、下肢の血管における閉塞性動脈硬化症が発生すれば、足の血管が詰まり、悪化すると壊疽にいたるほか、下肢を切断しなくてはならなくなります。
こうした糖尿病や維持透析などに由来する足病変の重症化で下肢切断となる人、糖尿病の足壊疽で切断を余儀なくされる人は、少なくありません。防止するには、日頃からのフットケアが重要となりますが、この下肢切断リスクを低減させるものとして、スタチンに注目する研究報告がなされました。
スタチンは血中コレステロール値を低下させるもので、主要な心血管系イベントの発現リスクに関する効果を示した研究報告はこれまでにも多くなされていますが、下肢保護という観点からみた研究はめずらしいものです。
今回の研究を実施したのは、Chien-Yi Hsu氏らのグループで、その成果をまとめた論文は「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に4月7日付で掲載されました。研究は台湾における2000年~2011年の糖尿病データベースを用いた観察コホート研究で、末梢動脈疾患を有する2型糖尿病成人患者、69,332人を対象としています。
非使用者に比べ、心血管死リスクも減少
研究グループは、患者を3つの群に分類して観察・検討を行いました。1つ目はスタチンを用いている患者で11,409人、2つ目はスタチン以外の脂質低下剤を用いている患者で4,430人、3つ目はこれら薬剤を用いていない53,493人の患者群です。
分析の結果、スタチンを用いていない患者に比べ、スタチンを使用している患者群では、下肢切断のリスクが25%低減され、病院内における心血管死のリスクも22%低下、さらに全死因による死亡率も27%低下していることが明らかとなりました。
また、傾向スコア一致分析を施しても、スタチンによる下肢切断リスク低減の効果は変わらず確認され、スタチンを使用していた患者でのみ、競合する死亡リスクを考慮したデータ補正を行っても、下肢切断のリスク低減と心血管死のリスク低減に関連性があることが認められたそうです。
こうした一連の結果から、研究グループでは、末梢動脈疾患を有する糖尿病患者の場合、スタチンを用いることで下肢切断や心血管死リスクを低減できる可能性が強く示唆されたとしました。
(画像は写真素材 足成より)

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism : Statin therapy reduces future risk of lower limb amputation in patient with diabetes and peripheral artery disease
https://academic.oup.com/