近年、膵β細胞や脂肪細胞を標的とした抗肥満作用をもつことが明らかとなり、臨床応用への取り組みが始まっている内分泌ホルモン様の繊維芽細胞増殖因子(FGFs)のひとつであるFGF21について、新たな発見が自治医科大学医学部らの研究グループによってなされました。
視床下部室傍核のニューロンを活性化し摂食を抑制
研究は、自治医科大学医学部生理学講座統合生理学部門の矢田俊彦教授、抗加齢医学研究部の椎崎和弘講師、黒尾誠教授らのグループによるもので、その成果は、同大学と、研究に関わった国立研究開発法人日本医療研究開発機構から4日付で発表されたほか、「Scientific Reports」にも4日付で掲載されています。
FGF21については、血液脳関門を通過し、脳内へ移行することと、FGF21受容体であるβ-klothoが視床下部視交叉上核と摂食中枢である視床下部の室傍核にみられることが、すでに報告されていましたが、摂食に関わる詳しいメカニズムなどは未だ明らかになっていませんでした。
そこで研究グループはマウスを用い、FGF21で摂食調節がどのように起きているかを調べました。まず、FGF21をマウスの側脳室内に投与したところ、3時間後から24時間後までの摂餌量が有意に減少することが確認されました。
そのため次に、FGF21の標的神経核を調べるべく、脳室内へとFGF21を投与した後、神経活性化マーカーのc-Fos発現を調査、すると室傍核でこれが増加していることが分かったそうです。このときの室傍核神経ペプチドにおけるmRNA発現をみると、Nesfatin-1のmRNAが増加しており、またFGF21投与でみられた摂食抑制作用は、この室傍核特異的Nesfatin-1を欠損させたノックアウトマウスではみられなくなることが確認できました。
重症低血糖を防ぐ安全な新治療法の開発に
さらに研究を進めたところ、FGF21はマウスから単離した室傍核Nesfatin-1ニューロンに直接作用し、その神経活動増加は高グルコース濃度の存在下でのみ発生することが明らかになったそうです。
マウスにおいても、高血糖時には摂食抑制作用が発揮されましたが、血糖が低下している絶食時には作用がみられなかったため、FGF21は血糖が上昇したときに食欲を抑え、過血糖を防いでいると考えられています。
従来、空腹時にFGF21の分泌が増加し、脂肪組織で脂肪分解作用を発揮すること、肝臓では脂質代謝を亢進させケトン体の産生を促して低血糖に対する防御的なホルモン様機能を示すことが知られていましたが、今回の研究から、FGF21は血糖上昇時に食欲を抑制、過血糖を防ぐ働きがあることが示唆されました。
よって研究グループでは、これまでの糖尿病治療薬の場合、その治療過程で重症低血糖を起こすリスクが一定程度存在したものの、このFGF21に着目した臨床応用を図っていけば、そうしたリスクのない安全で効果的な新しい治療法が開発できる可能性があるとしています。今後のさらなる研究・開発に期待したいですね。
(画像はプレスリリースより)

自治医科大学医学部/国立研究開発法人日本医療研究開発機構 プレスリリース
http://www.amed.go.jp/news/release_20170404-01.htmlScientific Reports : Fibroblast growth factor 21, assisted by elevated glucose, activates paraventricular nucleus NUCB2/Nesfatin-1 neurons to produce satiety under fed states
http://www.nature.com/articles/srep45819