2型糖尿病患者の場合、心血管系疾患の発症リスクが上昇することが知られていますが、とくに急性冠症候群(ACS)と呼ばれる症状が発現した患者の場合、アディポネクチン濃度がその後のリスクと関連するという最新の研究報告がなされました。
アディポネクチン濃度が高いと心血管死や死亡リスクが上昇
この研究は、Brian A. Bergmark氏らのグループによってなされたもので、その成果をまとめた論文は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に3月17日付で掲載されています。
急性冠症候群(ACS)は、急激な冠動脈の閉塞によって引き起こされるもので、閉塞の程度や位置により、不安定狭心症から急性の心筋梗塞、心臓突然死などの発現につながります。心臓の筋肉に酸素と栄養を供給している冠動脈にできた動脈硬化性のプラーク(コレステロールエステルを大量に含んだ脂質の塊・粥腫)が突然破裂し、血栓が形成されて、冠動脈の血管における血流減少や途絶を起こすというメカニズムで、糖尿病を有している場合や喫煙習慣がある場合、高血圧、高コレステロール血症の症状があるケースなどでは、発生リスクが高くなることが知られています。
研究グループは今回、このACSを発症した2型糖尿病患者の5,213人を対象として、ACS発症後の15~90日(中央値・45日)にデータ登録を行い調査を開始、18カ月後までの心血管系イベント発現率を調べて、アディポネクチン濃度との関連性を検討しました。
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンで、インスリン受容体を介さない糖の取り込みや脂肪の燃焼、インスリン感受性など、さまざまな代謝関連作用に関与するものであることが分かっています。
心筋梗塞、脳卒中では有意差なし
研究グループは、まず患者らのベースライン時における血中アディポネクチン濃度を測定、その中央値は5.2マイクログラム/mLでした。この測定結果をもととして、濃度の低い順でQ1~Q4までのグループ分けを実行、それぞれの群で心血管系イベントの発生リスクを比較しています。
すると、最も濃度の高いQ4群では、心血管系疾患の発現が8.4%、心不全による入院が7.5%、全死因による死亡率が10.8%となり、最も低いQ1群の心血管系疾患発現1.7%、心不全による入院1.7%、全死因による死亡2.4%と比べて、いずれも有意に高くなっていることが明らかとなりました。
年齢や性別、各種指標、心不全入院の有無、推定糸球体濾過率、高血圧といった要素によるデータ補正を行っても、Q4群における心血管系疾患を原因とした死亡リスクの増加は有意に存在することが認められ、さらに心不全による入院、全死因による死亡のリスク増加とも、独立した関連性が保持されることが確認されたそうです。
一方で心筋梗塞と脳卒中の発現率に関しては、それぞれの群における有意差は認められていません。
これらの結果から研究グループでは、ACSを発症した2型糖尿病患者では、アディポネクチン濃度が心血管系イベントの発現、全死因による死亡、心不全による入院といったリスクの増加と独立して関連することが判明したとしつつ、心筋梗塞など一部のものとの関係は認められなかったことから、アディポネクチン濃度と心血管系イベントの予後転帰との関係性は複雑であり、さらなる研究・検討が必要だとまとめました。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes, Obesity and Metabolism : Baseline adiponectin concentration and clinical outcomes among patients with diabetes and recent acute coronary syndrome in the EXAMINE trial
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12905/full