糖尿病患者では、心血管系疾患のリスクが上昇するため、急性心不全を発症する人も少なくありません。対処が遅れれば命に関わる問題ですが、適切な処置を受けて退院となった患者を対象とした調査で、血圧が高い人の方が、正常な血圧の人に比べ、有意にその後の死亡リスクが低くなるという驚きの研究結果が報告されました。
米国心臓病学会の発表から話題に
この報告は米国心臓病学会(ACC)が3月8日付で公開したもので、同学会の第66回年次集会における発表内容の紹介となっています。これまでの研究では、心不全患者や2型糖尿病患者における高血圧が、健康状態に悪影響を及ぼすことが示されています。では、なぜ今回のような結果が確認されたのでしょうか。
研究グループは、中東7カ国を対象に、急性心不全で入院した患者の症例データ5,005件を収集、このうち2型糖尿病を有していた2,492人の患者について、医療記録の解析を行いました。
患者は退院時における収縮期血圧によって、120mmHg未満の低血圧群と、120~120mmHgの正常血圧群、130~149mmHgの中等度高血圧群、150mmHg以上の高血圧群の4群に分類され、それぞれの群で心不全によるはじめの入院から1年間の死亡率と、その後の心不全発症関連で入院した率がどうなっているか、比較検討されています。
その結果、追跡期間中における低血圧群と中等度高血圧群の死亡率および心不全関連入院率は、正常血圧群のそれと同様で、有意な差は認められなかったそうです。しかし高血圧群では、患者の死亡率が正常血圧群に比べ、45%有意に低いという意外な結果になりました。一方で高血圧群における心不全関連入院率は、正常血圧群より有意に高く、47%のリスク上昇が確認されています。
なおこれらの結果はいずれも、年齢や性別、喫煙の有無、コレステロール値、心拍数、クレアチニン値、左室駆出分画など、影響を与えうる諸要素を考慮したデータ補正後も変わらず認められたそうです。
定期的な受診、後の適正な管理こそが重要
退院時に高血圧であった群の方が、正常血圧群などに比べ、死亡率がより低くなるという予想に反した結果となりましたが、研究グループによると、こうした意外な結果が導き出されるケースはこれまでにも存在したといい、その例として、通常は心疾患患者で健康状態を悪化させることになる、BMI指数が高い患者で、2型糖尿病と心不全を合併している場合に、生存率でみると高値の方が有利に働いていた「肥満パラドックス」の報告を挙げています。
このパラドックス例なども参考に、研究グループでは、今回の結果について、高血圧状態にある患者の方が、より専門医の定期的受診を受けるケースが多く、その後の治療・病態管理が適切に行われやすい、また健康状態の悪化兆候を早期に発見して処置がなされやすいということが影響し、死亡率の低減がみられたのではないかと考察しました。
結果のみをみると意外すぎる内容ですが、こうした考察からは、やはり日々の病態管理を細やかに行っていくこと、定期的に受診して医師のアドバイスを受けながら改善を試みていくこと、異常があれば早期に対応することが重要であることが示唆されており、急性心不全の既往や血圧の状態にかかわらず、これらのポイントをおさえた日々の生活で、健康リスクの低減を図っていくことが一番といえそうです。
(画像は写真素材 足成より)

American College of Cardiology(米国心臓病学会・ACC) 発表資料
http://www.acc.org/