糖尿病に対する治療方法には、食事療法や運動療法とともに薬物療法があり、さまざまな薬剤が生み出されてきました。現在は薬によってアプローチの仕方も多様であることから、それらを組み合わせてより良い効果が得られるよう、治療プランを設計していくようになっています。
適切なタイミングで開始するとHbA1c値が大幅に低下、合併症リスクも低減
しかし、こうした複数の薬剤を用いて行う併用治療では、スタートするタイミングが適切であるかどうかによって、期待できる効果や後のリスク、転帰に大きな違いが生じてくることが明らかとなってきました。
Henry J. Folse氏らの研究グループは今回、インスリン使用歴のない2型糖尿病患者で、メトホルミンを服用してもHbA1c値が依然8%以上である人を対象とした、実際のデータをベースとする仮想コホートを用い、スルホニル尿素薬、DPP-4阻害薬、チアゾリジン系薬の順で、併用治療開始の時期が最適なタイミングであった場合と、遅れてしまった場合の両シナリオに関する比較検討を実施、血糖コントロール状況や転帰にどのような違いがみられるかを調べました。
この研究結果をまとめた論文は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」オンライン版に2月17日付で掲載されています。それによると、1年後で、適切なタイミングでの併用治療が開始できた場合、HbA1c平均値は6.8%と大きく低下し、有意に改善していましたが、開始が遅れた場合では8.2%となったそうです。
重症低血糖リスクは早めの治療開始で増加、最適なタイミングで管理を徹底することが重要
また、5年後における合併症リスクで適切なタイミングで併用治療を開始した群と、開始が遅れた群を比較すると、いずれも遅れのない適切な時期で開始された患者群の方が、リスクを低減できていることも判明しました。
症状別にみると、主要な心血管系イベントの発生では18.0%、心筋梗塞では25.0%、心不全で13.7%、下肢切断では20.4%のリスク低下となっています。
一方で重症低血糖の発生リスクは、最適なタイミングで併用治療を開始したシナリオの方が19%、遅れた場合が12.5%となり、より早期に開始することでリスクが高まることが明らかになりました。この結果は、20年後に設定しても同様であったことが報告されています。
これらの結果から研究グループでは、経口糖尿病治療薬(経口血糖降下薬)の併用治療を行う場合、開始タイミングが重要で、ガイドラインの推奨に従って最適な時期に始められれば、HbA1c値を顕著に低下させられるほか、合併症リスクをより低くできるとしました。しかしその場合、重症低血糖の発生リスクは、開始タイミングが遅れた場合よりも上昇するため、この点に注意して臨床応用していくべきだとも指摘しています。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes, Obesity and Metabolism : Delays in treatment intensification with oral antidiabetic drugs and risk of microvascular and macrovascular events in patients with poor glycaemic control : An individual patient simulation study
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12913/full