骨というと、人間の身体を支えるまさに“骨格”としてあるもの、動的な性格はあまりもちあわせないものといったイメージがありますが、近年の研究ではひとつの内分泌臓器であり、さまざまなホルモンを産生・分泌していることが明らかとなってきています。
リポカリン2が食欲を抑制することをマウスで確認
こうした骨細胞の分泌するホルモンについて、米コロンビア大学メディカルセンターの研究者らが、人間の食欲を司る脳の部分に働きかけ、摂食行動を調節していることを発見しました。これまでには知られていなかったエネルギーバランスを調節するメカニズムを見出しており、今後、2型糖尿病や肥満症、その他さまざまな代謝障害の治療への応用が期待されるところとなっています。
研究は、Ioanna Mosialou氏らの研究グループによって行われたもので、その成果は同大学から3月8日付で発表されたほか、「Nature」オンライン版に同日、論文が掲載されています。
コロンビア大学メディカルセンターの研究グループは、2007年にオステオカルシンという骨からのホルモンによって、エネルギー代謝が調節されていることを発見。代謝に影響を与える他の内分泌器官では、通常複数のホルモンが関与するため、骨の場合も代謝を制御するホルモンが、まだ他に存在すると仮説を立てました。
そして2010年には、マウスの骨形成細胞でFOXO1と呼ばれる遺伝子をノックアウトすると、食べる量が減少し、血糖バランスが改善されることを見出し、オステオカルシンは食欲とは関係しないため、ここに新たな未知のホルモンの手がかりがあると考えたそうです。
リポカリン2を人為的に増やせば症状が改善か
これらの知見を踏まえて研究グループは今回、FOXO1を欠損した骨芽細胞が、脂肪細胞によって分泌され肥満と関連があると考えられていた、リポカリン2というたんぱく質を大量に産生していることを発見、このリポカリン2レベルは、脂肪細胞よりも骨芽細胞で10倍も高いことも確認しました。
そこで、骨芽細胞または脂肪細胞のリポカリン2を欠損したマウスを作成し、検証したところ、骨芽細胞にこのホルモンをもたないマウスだけで食欲の亢進がみられ、代謝障害の兆候が現れたそうです。
また、正常な体重のマウスと、レプチン受容体およびレプチンシグナル伝達をノックアウトした肥満マウスの両方で、リポカリン2を注射すると、食欲が抑制されるほか、代謝が改善し体重減少が起こることを発見しています。
研究グループはさらに、このリポカリン2が脳の関門も通過することを確認し、脳では食欲を調整する主要脳領域の視床下部にあるメラノコルチン4受容体ニューロンにたんぱく質が結合すると活性化して、食欲抑制を引き起こすことが知られているため、このメカニズムで食欲の抑制と代謝改善が起きたものと考えているそうです。
2型糖尿病患者における分析では、リポカリン2の血中濃度が、体重やHbA1c値、長期にわたる血糖値レベルと逆相関の関係にあることが判明しているため、リポカリン2の濃度を高めれば、体重の増加を防ぎ、血糖コントロールを良好に導いていける可能性があります。今後、新たな治療法として応用されていくことが期待されるでしょう。
(画像はプレスリリースより)

Columbia University Medical Center プレスリリース
http://newsroom.cumc.columbia.edu/Nature : MC4R-dependent suppression of appetite by bone-derived lipocalin 2
http://www.nature.com/