近年、糖尿病治療においてもさまざまな新薬が登場し、治療選択肢が増加してきています。それとともに、患者個々の状態を踏まえ、リスクを考慮した最適な選択を行うこと、治療計画をカスタマイズしていくことが重要となっているのです。
各薬剤タイプでの高齢患者における心血管イベントリスクは?
こうした糖尿病の個別化医療を最適化していくための新たな知見となる研究結果報告が、「Diabetes, Obesity and Metabolism」オンライン版の2月14日付記事に掲載されました。DPP-4阻害薬は、スルホニル尿素薬(SU)やチアゾリジン系薬剤と比べ、高齢糖尿病患者における心血管リスクの増加を抑えられるとされています。
この研究は、Mugdha Gokhale氏らのグループによるもので、2007年~2013年に65歳を超えるメディケア受給者のデータを用い、調査開始前の6カ月間は薬を使用しておらず、新たにDPP-4阻害薬、SU薬、チアゾリジン系薬剤の使用を開始した患者群を抽出し、それぞれの心血管イベント発現リスクを比較・検討したものとなっています。
研究グループは、結果に影響を与えうる因子を考慮し、スコア調整Coxモデルを用いて分析、心筋梗塞、脳卒中、高血圧での入院および複合アウトカム(心筋梗塞・脳卒中・全死因による死亡)のハザード比とリスク差で比較を行っています。なおデータにおける治療期間の中央値は1年でした。
DPP-4阻害薬が他の薬よりも心血管リスクを増やさない可能性
まずDPP-4阻害薬とSU薬の比較では、DPP-4阻害薬の30,130件、SU薬の68,382件がデータ対象となり、患者の平均年齢は75歳、男性が41%、ベースラインで心血管イベントがみられる人の割合は55%でした。
解析を行った結果、SU薬に対するDPP-4阻害薬の複合アウトカムハザード比は0.75で、心筋梗塞の年間リスクは、DPP-4阻害薬が100人あたり1.00、SU薬は100人あたり1.47、脳卒中の年間リスクはDPP-4阻害薬が0.98、SU薬では1.09となっていました。いずれもDPP-4阻害薬のリスクが低くなっています。
次にDPP-4阻害薬とチアゾリジン系薬剤の比較では、DPP-4阻害薬の20,596件、チアゾリジン系薬剤で13,526件が対象となり、患者の平均年齢は74歳、男性が42%でした。ベースラインで心血管イベントを伴っていたのは30%です。
こちらの解析結果では、チアゾリジン系薬剤に対するDPP-4阻害薬の複合アウトカムハザード比が0.94となりました。また心筋梗塞の年間発生リスクは、DPP-4阻害薬、チアゾリジン系薬剤のいずれも100人あたり0.90以下で、脳卒中のリスクはいずれも100人あたり0.80以下であったと報告されています。
これらの結果から研究グループでは、今回の研究が短期間の治療期間に限られたものではあるものの、高齢糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬での治療が、SU薬やチアゾリジン系薬剤を用いるよりも、心筋梗塞や脳卒中、心不全といった心血管イベントの発生リスクを抑制できる可能性が示唆されるものとなったとまとめました。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes, Obesity and Metabolism : No increased risk of cardiovascular events in older adults initiating dipeptidyl peptidase 4 inhibitors versus therapeutic alternatives
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12906/full