糖尿病にはさまざまな合併症がありますが、なかでも糖尿病性腎症は3大合併症のひとつであるとともに、人工透析が必要となる原因疾患の1位となっています。また糖尿病性腎症を発症すると、心臓病や脳卒中のリスクも増大することが知られているため、発症や進展を食い止めることが非常に重要とされています。
成因に基づいた画期的検査法を開発!
こうした糖尿病性腎症ですが、その成因はいまなお十分には解明されておらず、簡便かつ正確で、早期における予後診断、治療対応の妥当性判断などに活かせる検査法も確立されていません。
そこでこの課題に対処すべく、新潟大学大学院医歯学総合研究科機能分子医学講座の斎藤亮彦特任教授らの研究グループが研究を進め、今回新たな検査法を開発することに成功しました。この研究成果は「Diabetes」オンライン版に3月13日(日本時間)付で掲載されています。
研究グループは、2015年に肥満・メタボリックシンドローム型の糖尿病モデルマウスで、腎臓の近位尿細管細胞の管腔側膜に発現するメガリンという分子が、入口となって腎障害性タンパク質などを取り込むことで、リソソームにタンパク質代謝負荷がかかり、機能障害を起こすことから、糖尿病性腎症が発症、進展していくというメカニズムを見出しました。
この知見をもとに、今回国立がん研究センター研究所とデンカ生研株式会社の協力を得て、こうしたリソソーム負荷による糖尿病性腎症の発症・進展機序に伴い、メガリンがエクソソームに搭載され、腎臓から尿中へと出ていく量が増加するということを新たに発見しました。
この発見により、排出されたメガリンを尿中で定量すれば、糖尿病性腎症の早期診断や予後予測に役立つ可能性があることを見出したのです。
さまざまな慢性腎臓病の診断にも応用可能
腎臓はおよそ100万個のネフロンという構造体からできており、この数は出生時に決定されています。ネフロンでは糸球体を通してさまざまな成分が濾過され、尿細管を流れていく家庭で、細胞による再吸収や代謝が行われたり、多様な物質が分泌されたりして、最終的に尿が生成され、体外へと排出されていきます。
尿細管の長さはだいたい20歳代まで伸びていきますが、それ以降は変わらず、こうしたネフロンと尿細管が腎臓の代謝機能を規定するものとなっているのです。
ネフロンの数が少ない、または尿細管の長さが短い場合、糖尿病を患うと代謝負荷が増大し、糖尿病性腎症を発症するリスクが高まるほか、進行もしやすくなる可能性があります。また、一部のネフロンが障害されると、残りのネフロンにおける負荷が増大し、さらにネフロン障害が進むという悪循環のリスクも上昇します。
こうした場合、今回研究グループらが見出した尿中メガリンの測定で得られた値を、機能ネフロン数を反映するクレアチニン値で除すことにより、単一ネフロンあたりの代謝負荷を評価することができると考えられ、有効な検査法として臨床応用可能とみられています。
研究グループでは今後、尿中メガリン測定を組み込んだ臨床研究を進め、3~4年後をめどに尿中メガリン測定のための試薬発売や薬事承認を目指し、本格的な実用化を図っていく方針としています。
この新しい検査法は、糖尿病性腎症の発症や進展のしやすさを早期に診断したり、適切な治療法を判断したりする指針となって重症化を防げると期待されるほか、それ以外のさまざまな慢性腎臓病における重症度や予後診断にも役立てられるとみられ、今後の応用も注目されます。
(画像はプレスリリースより)

新潟大学 プレスリリース
http://www.niigata-u.ac.jp/news/2017/29279/新潟大学 プレスリリース詳細資料
http://www.niigata-u.ac.jp/Diabetes : Exocytosis-Mediated Urinary Full-Length Megalin Excretion is Linked with the Pathogenesis of Diabetic Nephropathy
http://diabetes.diabetesjournals.org/