糖尿病状態にある場合、血糖コントロールをいかに良好な状態へと導くかを考えていくことは当然のことです。しかし、全身の健康状態からみたとき、一定の条件下では、それを強く意識しすぎることがかえって害をもたらすこともあるようです。
ICUに入った重症小児患者における血糖コントロールについて検討
正常な血糖値を維持することを目指した厳しい血糖コントロールの効果については、心臓手術後の重篤な成人患者や小児患者で、その後の状態を改善するとは認められないとする多施設共同研究の報告がすでにあり、ケースによっては治療計画を見直すべきであることが、近年示唆されるようになっています。
しかし、心臓手術を受けていない重症小児患者を対象とした研究は未だ十分になされておらず、その効果やリスクが不明であったため、Michael S.D. Agus氏らの研究グループは、この検討を行うべく、集中治療室に入った小児患者を対象とする血糖コントロールに関する研究を行って、その結果を発表しました。この成果をまとめた論文は、「The New England Journal of Medicine」オンライン版に2月23日付で掲載されています。
研究グループは、35カ所のセンターにおいて、心臓手術を受けた患者を除き、血糖値で130mg/dLを超えるレベルの高血糖を有していて、ICUに入った重症の小児患者713人を対象として実験を行いました。患者の年齢は1.4~12.8歳で、彼ら713人を、80~110mg/dL、または150~180mg/dLを目標血糖値とする群にランダムで割り付け、必要な処置を行って検討を実施しています。
厳しい血糖コントロールはかえってリスクをもたらしうる結果に
80~110mg/dLのより低い血糖値を目指した群には360人が、150~180mg/dLのやや高い血糖値を目標とした群には353人が割り付けられ、インスリンの投与は前者の群における患者の98.6%に、後者の群における患者の61.6%でなされました。
主要評価項目とされた28日目までのICUに入らなかった日数に関しては、intention-to-treat解析を行った場合、中央値での2群間における有意な差は認められませんでしたが、per-protocol解析では、低い目標血糖値の群の方が有意に短くなっていたそうです。
血糖値で40mg/dL未満となる重度の低血糖発現は、低い目標血糖値をとった群で5.2%、やや高い目標血糖値の群で2.0%となり、やはり厳しい血糖コントロールを行った群で多くみられていました。そのほか、医療関連の感染発生率も低い目標血糖値の群で3.4%、やや高い目標血糖値の群では1.1%と、前者で有意に高くなることも確認されました。
こうした時点で、患者に対し試験が有害となるリスクが高く、効果をもたらす可能性が低いと判断されたことから、データ及び安全監視委員会の勧告も受け、予定試験を早期に中断したとされています。
なお28日、または90日の時点における死亡率、人工呼吸器を使用しなかった日数、入院を要しなかった日数、臓器機能障害の重症度といった項目では、いずれも2群間に統計学的有意な差は認められなかったことが報告されています。
今回の結果から研究グループでは、ICUに入る重症な小児患者の場合、80~110mg/dLといった、より低い設定の血糖値を目標とした厳しい血糖コントロールを行うことが、有益な効果よりもリスクをもたらす可能性が高いとまとめました。
高血糖状態が身体にもたらす悪影響ももちろん見逃すことのできないものですが、全身の状態を加味した、個々に合った目標値の設定と血糖コントロールこそが大切であるようです。
(画像は写真素材 足成より)

The New England Journal of Medicine : Tight Glycemic Control in Critically Ill Children
http://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1612348