2型糖尿病患者で肥満症も有する場合、治療においては体重コントロールも非常に重要な部分となってきます。食事療法や運動療法で改善を図ることはもちろんですが、十分な効果が得られない場合、肥満外科手術を行うことも選択肢となり得ます。
肥満外科手術実施と内科的治療の継続を5年間にわたり比較
いわゆる肥満手術と呼ばれる胃バイパス術やスリーブ胃切除術などは、日本国内における実施はまだ少なく、稀な例となっていますが、米国では昨年末に米国糖尿病学会が「糖尿病の標準治療ガイドライン2017」において、肥満症の糖尿病患者に対する治療選択肢として言及するなど、認知が進んでいます。
2014年4月からは、日本でも腹腔鏡下胃スリーブ状切除術が、一定の条件を満たす場合、保険適応になっていますので、今後はより一般的に検討される可能性もあるでしょう。そうしたことを踏まえた上で、参考にしたい最新の研究論文が「The New England Journal of Medicine」の2月16日号に掲載されています。
この研究は、Philip R. Schauer氏らの研究グループによるもので、BMI指数が27~43の肥満を伴う2型糖尿病患者150人について、肥満外科手術を施した場合と内科的治療を行った場合の長期ランダム化比較研究を行ったSTAMPEDE試験の解析結果をまとめたものです。なお日本肥満学会では、通常BMI25以上を肥満とし、さらに35以上を高度肥満と定義しています。
研究グループは、患者150人を、内科的強化療法を施す群と、内科的強化療法に加え、Roux-en-Y胃バイパス術という肥満外科手術を施す群、内科的強化療法とスリーブ胃切除術の手術を施す群の3群に無作為で割り付け、経口糖尿病薬あり、もしくは経口糖尿病薬なしの場合での、HbA1値6.0%以下達成率を前向き研究で検討しました。
内科的治療単独より高い効果を発揮
5年間の追跡期間で1人が死亡し、残る149人中134人の患者が指定治療を完遂しました。この134人におけるベースラインの平均年齢は中央値で49歳、HbA1c値は9.2%、BMIは37だったと報告されています。
5年後におけるHbA1c値が6.0%以下を達成した率は、内科的強化療法のみの群では5%にとどまりましたが、Roux-en-Y胃バイパス術を施した群では29%で、スリーブ胃切除術を施した群では23%となりました。
また、ベースラインと比較したHbA1c値の低下量でも、内科的強化療法のみの群が0.3%のマイナスになったのに対し、肥満外科手術を加えた群では2.1%のマイナスと、より大きな改善がみられたそうです。
そのほか、体重はRoux-en-Y胃バイパス術群が-23%、スリーブ胃切除術群が-19%、内科的強化療法群は-5%で、トリグリセライド値をみると、Roux-en-Y胃バイパス術群が-40%、スリーブ胃切除術群が-29%、内科的強化療法群が-8%となっており、HDL-C値ではそれぞれ-32%、-30%、-7%に、インスリン使用は-35%、-34%、-13%となっていました。
いずれの観点からも、肥満外科手術を行った群で有意な改善が認められ、36項目の健康調査から測定したQOLのスコアも0~100の値で、Roux-en-Y胃バイパス術群が17、スリーブ胃切除術群が16、内科的強化療法群が0.3と、手術を行った方が優れていました。手術を受けた患者では、1回の再手術例を除いて、主要な手術後の外科的合併症も報告されていません。
これらの結果から、BMI27~43の肥満を伴う2型糖尿病患者の場合、内科的強化療法のみでの治療よりも、肥満外科手術を伴った治療を行うことがより効果的であり、手術を積極的な治療選択肢として考慮する合理性が十分に認められるとされました。
慎重に取り組んでいく必要があることに変わりはありませんが、肥満を伴う糖尿病での今後の治療法として、手術を含めた方法が注目されていく可能性は高そうです。
(画像は写真素材 足成より)

The New England Journal of Medicine : Bariatric Surgery versus Intensive Medical Therapy for Diabetes ~ 5-Year Outcomes
http://www.nejm.org/