標準治療に加えることで進行性腎疾患リスクを抑えられる可能性、初のSGLT阻害薬
ドイツのベーリンガーインゲルハイムと、米国のイーライリリー・アンド・カンパニーは14日、新血管疾患を有する成人2型糖尿病患者で「ジャディアンス」(一般名・エンパグリフロジン)を標準治療に加えることで、腎疾患の新規発症や悪化のリスクを有意に低下させることができるという試験結果を得たことを明らかにしました。
この結果は、「The New England Journal of Medicine」に掲載され、また米国・ニューオーリンズで開催された米国糖尿病学会(ADA)第76回学術総会においても発表されています。
糖尿病患者では、腎疾患を併発しているケースが多く、2型糖尿病患者の約半数がそうした患者だといわれています。腎疾患は、悪化すると腎不全に至ることがあり、透析または腎移植が必要となってしまいます。また腎機能の低下は、余命を平均以下としてしまう傾向があるほか、低血糖や心血管疾患など、その他の糖尿病関連合併症リスクの上昇を招くなど、さまざまな悪影響をもたらすことが分かっています。
今回使用された「ジャディアンス」は、1日1回経口投与する選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬で、世界各国において成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています。腎臓によるグルコース(血糖)の再吸収を阻害し、尿中へグルコースを排出することで血糖値を低下させるタイプの薬剤であり、SGLT2阻害は、グルコースを直接的に標的とするため、膵β細胞機能やインスリン経路とは無関係に作用するものとなっています。
透析などに至るリスクを55%減少!
公表された結果は、世界42カ国、7,000人以上の心血管疾患既往歴をもつ2型糖尿病患者を対象とした、長期多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である「EMPA-REG OUTCOME試験」の探索的評価項目に対し、事前に規定された計画にそって解析された結果の一部で、腎疾患の新規発症または悪化が事前規定の複合評価エンドポイントとなっています。
公表された結果によると、「ジャディアンス」はプラセボ(偽薬)と比べ、透析などに代表される腎置換療法の開始を55%減少させるほか、血中クレアチニンの倍化を44%減少、アルブミンというタンパク質がきわめて高濃度で尿中に存在する、マクロアルブミン尿と呼ばれる状態への進行を38%減少させることが確認されています。
また、時間経過に伴う腎機能の低下に対しても、プラセボと比較して有意に抑制されることが分かり、さらに試験に参加した患者の大部分が、2型糖尿病に伴う腎疾患に対して現時点で推奨される標準治療薬のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬をすでに服用していましたが、こうした治療にプラスして「ジャディアンス」を用いても、抑制効果が認められたそうです。
のちに行われた部分集団解析の結果では、ベースライン時における腎機能障害やアルブミン尿の有無に関わらず、「ジャディアンス」で腎臓関連の合併症などアウトカムリスクを低下させられることが判明しました。
現時点で「ジャディアンス」は、腎疾患に関連する効能・効果の取得には至っておらず、あくまで試験段階の結果ですが、今後の合併症新規治療薬になりうるとみられ、期待が高まっています。

ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社 プレスリリース
http://www.boehringer-ingelheim.jp/press_releases/160616