近年では、肥満を伴った糖尿病患者の増加が著しく、大きな社会問題ともなっています。太ることと血糖値が高くなることは、当たり前のように関係していると感じている方も多いかもしれませんが、なぜそうなるのか、そのメカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。
肥満した脂肪細胞で特有のタンパク質が増加
この肥満と血糖値上昇の関連について、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野教授の片桐秀樹氏らによる研究グループが、分子メカニズムを明らかにすることに成功し、論文を発表しました。研究成果は22日、東北大学から発表されたほか、2月21日付で「Cell Reports」オンライン版に掲載されています。
肥満になると、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が生じ、血糖値が上昇します。インスリン抵抗性は、糖尿病の発症につながるほか、メタボリックシンドロームのもとともなるものです。
このインスリン抵抗性については、肥満状態となった脂肪組織に白血球の一種であるマクロファージが入り込み、炎症を起こすことによって発生が促されることが知られています。マクロファージには、炎症を強める性質のあるM1型と、炎症を抑えるM2型がありますが、正常な痩せた状態の脂肪組織においてはほとんどがM2型で、肥満になると脂肪組織でM1型が増加していることが確認されるため、これが肥満患者の炎症、インスリン抵抗性の獲得原因になると考えられてきました。
今回研究グループは新たに、肥満した脂肪細胞で、ある特定のタンパク質が増加していることを発見しました。このタンパク質はCHOPと呼ばれるもので、細胞内でのタンパク質合成が過剰になった小胞体ストレスが生じると、劇的に増加するもので、肥満状態の脂肪細胞でも増加しているそうです。
ところが、このCHOPを欠損させたマウスを肥満させると、脂肪組織のマクロファージは増加するものの、M2型が多いままで、インスリン抵抗性や糖尿病になりにくいことが分かりました。
小胞体ストレスが鍵、新たな治療標的として期待
また痩せた状態の脂肪細胞は、マクロファージをM2型に誘導するTh2サイトカインという物質を分泌していますが、肥満した細胞では、この産生・分泌が減少することも判明し、さらにCHOPを欠損した脂肪細胞では、この産生減少が起こりにくくなっていることが確認されたそうです。
そして、培養脂肪細胞に小胞体ストレスをかけると、CHOPが増加、Th2サイトカインの産生が激減することを証明、これらから、肥満によって脂肪細胞の小胞体ストレスが発生すると、CHOPが増加してTh2サイトカインが減少し、脂肪組織内のM1型マクロファージが増加、慢性的に脂肪組織が炎症を起こし、インスリン抵抗性、糖尿病を惹起するという一連の分子メカニズムを解明するにいたっています。
なお研究グループはこれまでに、血管細胞におけるCHOPの増加が動脈硬化につながることや、膵β細胞での小胞体ストレスがインスリン分泌を減らしてしまうことなどを見出しており、今回の成果と総合すると、肥満状態における各臓器での細胞における小胞体ストレスでCHOPが増加し、インスリン抵抗性と分泌低下の両面から糖尿病発症につながっていく、またメタボリックシンドロームと高血糖に由来する血管障害の両面から動脈硬化につながっていくといったことが考えられるとしています。
よって、今回解明された分子メカニズムが、糖尿病やメタボリックシンドローム、動脈硬化に対する統合的な新しい治療標的になる可能性があるとまとめました。今後、画期的な治療法の開発につながることが期待されます。
(画像はプレスリリースより)

東北大学 プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/Cell Reports : ER Stress Protein CHOP Mediates Insulin Resistance by Modulating Adipose Tissue Macrophage Polarity
http://www.cell.com/