糖尿病では、高血糖状態が続くことによって血管が傷つき、動脈硬化を起こすなどするため、心不全を発症するリスクが高くなり、糖尿病と心不全を合併して発症している患者さんも少なくありません。心不全はまさに命に関わる疾患であり、早期に対処することが必要です。
増えるアジア系糖尿病患者、白人系とはリスクが違う?
しかし、こうした糖尿病と心不全の関連性については、人種間で差があるのかもしれません。最新の研究により、白人よりもアジア系で糖尿病と心不全の合併患者が多く、またその予後も不良であることが報告されました。
この研究は「JACC Heart Failure」に1月1日付で掲載されたもので、Ingrid E.M.Bank氏らの研究チームによってなされた臨床研究です。アジア地域には世界の糖尿病人口からみてもきわめて多くの患者がおり、その増加ペースも著しいものがあります。
先に述べたように、糖尿病と心不全は密接に関わる疾患であるため、アジア系患者でも同様の状態が発生していると考えられますが、その罹患率と臨床的意義に関するデータは乏しく、白人におけるデータと直接比較を行ったものもこれまでにありません。
そこで研究チームでは、シンガポールにおける54~70歳・中央値62歳の1,002人と、スウェーデンにおける68~84歳の1,953,777人について、現代人口ベースでの2種の心不全コホートを組み合わせ、糖尿病と心不全の関連性、入院および全死因死亡率でみた予後などを比較し、その違いについて検討しました。
なお、シンガポールのコホート対象者では男性が76%、肥満率は19.5%で、スウェーデンの場合は男性が60%、肥満率は24.8%となっていたそうです。
アジア系では低年齢・肥満なしでも強い関連性
分析の結果、アジア系では全体の57%にあたる569人に糖尿病があり、白人患者では全体の24%にあたる4,680人が糖尿病有病者でした。結果に影響を与えうる要素を考慮し、臨床的な共変量調整を行ったところ、白人患者では糖尿病と心不全の合併に肥満がより深く関与しており、そのオッズ比は3.45であったのに対し、アジア系患者では1.82となっていました。
また糖尿病が深く関係した心不全での入院あるいは全死因による死亡率は、アジア系患者の場合でハザード比1.50となり、白人患者の場合の1.29に比べ、有意に高かったことが報告されています。
一連の分析結果から研究チームでは、東南アジアにおけるアジア系の人々では糖尿病と心不全の合併が、白人患者の場合に比べて3倍近くも多くみられ、より低年齢でかつ肥満傾向も低い状態であるのに、予後の悪さと密接な関連性があることが判明したとし、糖尿病予防やその合併症予防において、人種間の違いを考慮に入れた対策をとっていくことが重要だと訴えています。
(画像は写真素材 足成より)

JACC Heart Failure : Prevalence and Clinical Significance of Diabetes in Asian Versus White Patients With Heart Failure
http://www.heartfailure.onlinejacc.org/content/5/1/14