近年は、さまざまなタイプの糖尿病治療薬が開発され、患者個々の状態にあわせて利用することが可能となってきています。しかし、高齢で2型糖尿病となっている患者に対し、そうした経口薬、新薬を用いても、同様の安全性や有効性が確保されるのか、合併症の抑制や健康寿命の延伸につながっているかといった検証データは依然限定的であり、チェックすべき課題ともなっています。
DPP-4阻害薬のシタグリプチンでリスクをチェック
そこで、M. Angelyn Bethel氏らの研究チームでは、高齢の心血管系疾患を合併した2型糖尿病患者に対し、経口血糖降下薬のシタグリプチンを投与した場合における身体への影響を検証する解析を実施しました。その結果をまとめた論文が、「Diabetes Care」オンライン版に1月4日付で掲載されています。
シタグリプチンは、膵臓に対しインスリン分泌を促したり、グルカゴン分泌を低下させて肝臓における糖の産生を抑制したりするインクレチン(GLP-1)というホルモンを活性化・濃度上昇させ、血糖依存的な血糖低下作用をもたらすタイプの薬剤です。インクレチンを分解する酵素のジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を選択的に阻害することで、インクレチンの働きを高めるため、DPP-4阻害薬と呼ばれています。
従来の血糖降下薬と異なる作用機序で働き、血糖値が高いときにほどよく下げるという効き方をするため、低血糖を起こしにくく、日々の血糖コントロールを継続的に良好なものとしやすいメリットがあります。
今回研究チームは、シタグリプチンに対する無作為化二重盲検プラセボ対照試験として実施された「Trial Evaluating Cardiovascular Outcomes with Sitagliptin(TECOS)」試験のデータをもとに、これに参加した、心血管系疾患を合併する75歳以上の2型糖尿病患者について、ベースライン時の状況と臨床転帰について解析を行い、シタグリプチン投与の影響について、検討・評価を行いました。
心血管系リスクには影響なし、重大な懸念もなしと報告
解析を行ったところ、14,351人のTESCO試験参加者のうち、75歳以上との年齢記録があるのは全体の14%にあたる2,004人で、平均年齢は78.3歳、男性が68%・女性が32%で、2型糖尿病の罹病期間は平均12.0年でした。
中央値2.9年の追跡期間中、高齢者の場合では、それ以外の人に比べ、心血管系疾患による死亡や非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院といった主要複合評価項目の症状発現一次転帰率が有意に高く、高齢者では100人年あたり6.46件、それ以外では100人年あたり3.67件で、リスクは1.72倍となっています。また死亡リスクは2.52倍、重症低血糖の発症が1.53倍、骨折が1.84倍と、それぞれ有意に高いことが確認されました。
しかし、こうした高齢患者のコホートで、シタグリプチン投与の影響をみたところ、主要複合評価項目の発症、一次転帰率はリスク比で1.10倍と有意な影響を及ぼしてはおらず、死亡も1.05倍、心不全を原因とする入院が0.99倍、重度低血糖の発症が1.03倍で、これらにも影響を与えていないことが分かりました。急性膵炎や膵臓がんの発生率、その他重篤な有害事象の発生についても、問題は確認されていません。
今回の解析結果から研究チームでは、心血管系疾患を合併する高齢の2型糖尿病患者に対し、シタグリプチンを用いても、心血管系リスクに与える影響はニュートラルであり、有意な問題性はないと考えられること、また重大な安全性上の懸念をもたらすような事態もみられていないと報告しました。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes Care : Assessing the Safety of Sitagliptin in Older Participants in the Trial Evaluating Cardiovascular Outcomes With Sitagliptin (TECOS)
http://care.diabetesjournals.org/