糖尿病の発症・進行に対する予防や治療では、食事療法として一定のカロリー制限を行ったり、糖質の制限を行ったりすることがなされます。しかし、栄養失調を起こさない範囲内でのカロリー制限であっても、それが寿命を延ばすことに効果があるか否かは、長年議論の的となってきました。
効果あり?効果なし?論争に決着
カロリー制限食による長寿効果については、1980年代後半から、米Wisconsin大学と、米国国立加齢研究所の研究チームがアカゲザルで実験を行い、その研究結果をそれぞれが報告しましたが、Wisconsin大学側が有意にプラスの効果をもたらすとした一方で、国立加齢研究所側は生存率に対する有意な効果は確認できなかったとしたのです。
そこで今回、両研究チームがあらためて共同で実験データの再解析を行い、その結果をまとめて発表しました。論文は、1月17日付の「Nature Communications」に掲載されています。
今回の研究では、生存率、体重、食物摂取量、空腹時血糖値、年齢に関連する疾患罹患率など、それぞれのデータを縦断的に直接比較、結果を左右する可能性のある研究デザインの違いにも着目し、検討を進めたそうです。
中高年での制限がより効果的か
発表された報告によると、それぞれの研究における主なデザイン上の違いとして、カロリー制限を開始した年齢が、Wisconsin大学のものは、7~15歳と人間でいえば成人にあたる年であったのに対し、国立加齢研究所の研究では、1~23歳までより幅広い年の個体を対象としていた点が注目されたそうです。
そこで、国立加齢研究所のデータを、1~14歳と人間でいう若年にあたるケースと、16~23歳の中高年にあたるケースとに分類し、それぞれで解析を実施すると、若年でカロリー制限を開始した群では寿命延長の効果が認められませんでしたが、後者の中高年になってカロリー制限を始めた群では、生存率への有意な効果が認められることが分かりました。とくにオスで高い効果がみられ、中高年でカロリー制限を始めたオスは、平均寿命が全体よりも約9歳長い、推計約35歳になったそうです。
また、同じカロリー制限食といっても、2つの研究では栄養成分の組成や原料の源が異なっており、Wisconsin大学の研究では、一貫性を確実なものとする観点から、摂取量を完全に定義した準浄化食が用いられていましたが、国立加齢研究所の研究では、季節変動の可能性などを踏まえながら、自然に調達された食物による食事を与えていました。
カロリー密度はいずれの研究も同一でしたが、栄養成分組成面では、Wisconsin大学の研究で用いられた食事に比べ、国立加齢研究所の研究におけるものは、低脂肪、高たんぱくかつ繊維質の多いものだったとされています。
この他にも、食事摂取の時間帯や個体の由来などに違いがありましたが、疾患面では、両研究の解剖データを調べたところ、カロリー制限食の開始年齢や性別にかかわらず、制限無く摂食した群に比べ、制限を行った群で、糖尿病や脳卒中などの発症が2倍程度遅くなっていることが判明しました。
糖尿病や脳卒中に骨粗鬆症や関節炎、白内障などの症状も含んだ加齢関連症状の発現リスクは、カロリー制限を行わなかった群が行った群に比べ、約2.7倍となっています。また、がんの発生率もカロリー制限を行った群の方が低く抑えられ、15~20%ほどのリスク低下につながっていたそうです。
今回の再解析研究により、長年の論争にひとつの決着点が得られ、やはり適切なカロリー制限食が健康寿命の延伸、加齢関連疾患のリスク低下につながることが示されました。研究はサルを対象としていますが、その過程で確認された健康に影響を与える因子・プロセスは、人間の健康管理や臨床研究にも応用できる可能性が高く、今後のさらなる研究進展と応用が期待されています。
(画像は写真素材 足成より)

Nature Communications : Caloric restriction improves health and survival of rhesus monkeys
http://www.nature.com/articles/ncomms14063