糖尿病と認知症の間には密接な関係があるといわれ、高齢の糖尿病患者の場合、認知症発症リスクが有意に高くなることが多くの研究によって示されています。従来は高血糖による血管障害から、脳血管性認知症が多く現れるとされていましたが、近年ではインスリン注射や経口薬などで生じた低血糖状態がアルツハイマー型認知症の発症にも影響すると考えられるようになっています。
糖尿病の臨床カテゴリと脳構造・機能に関連性
こうした数々の研究報告をさらに裏付けるものとなる最新の研究成果が、「Journal of the American Geriatrics Society」のオンライン版に12月5日付で掲載されました。
この研究は、Christiane Reitz氏らの研究チームによるもので、高齢者における糖代謝異常と認知症、認知機能との関連性を検討したものです。異常な高血糖状態にある人は、加齢とともに増加する傾向にあり、先述のようにそうした状態は、認知症発症リスクを増大させることも明らかになっています。しかし、こうした血糖値の異常がなぜ認知障害につながるのか、その詳細なメカニズムは未だ突きとめられていません。
そこで研究チームは、高齢者における、正常耐糖能や糖尿病前症、未知の糖尿病状態、すでに糖尿病の診断を受けた状態など、糖尿病の臨床カテゴリと、対象者の脳構造との関係性を調べ、さらに認知症発症や認知機能にどのような影響がもたらされているのか探ることを試みました。
脳梗塞や白質病変が増加、海馬などの容積は減少
対象となったのは、65歳以上のメディケア受給者で、糖尿病の臨床カテゴリ分類は、HbA1c値や2型糖尿病の病歴に基づいて行ったそうです。脳構造については、脳磁気共鳴画像法を用い、脳梗塞病変や白質病変の量、総灰白量、総白質量、総海馬量を測定、評価しました。また認知機能に関しては、神経心理学の手法で記憶力、言語機能、視空間認知機能、認知処理速度といった項目を測り、検討しています。
その結果、HbA1c値に基づき、糖尿病前症または糖尿病と定義された糖代謝異常がみられた対象者では、そうでない人に比べ、脳梗塞病変や白質病変の量が多くなっており、また白質、灰白質、海馬の容積量が横断的に減少していることが確認されました。
また教育レベルや人種、血管系のリスク因子など影響を与えうる他の要素に関する調整を行った後の結果においても、糖代謝異常と言語機能や視空間認知機能、認知処理速度の低下との間には、関連性が認められたことも報告されています。
研究チームでは、今回の研究によって、高齢者における糖代謝異常は、脳血管疾患の発症増加や白質、灰白質、海馬などの容量減少、言語機能や視空間認知機能、認知処理速度の悪化につながることを明らかにすることができたとし、脳の構造や認知機能に悪影響を与えることが強く示唆される結果となったと結論づけました。
全身の健康を維持し、認知症を予防していくためにも、糖尿病予防やその病態進行を抑制する血糖コントロールを良好にしていくよう気をつけたいものです。
(画像は写真素材 足成より)

Journal of the American Geriatrics Society : Relation of Dysglycemia to Structural Brain Changes in a Multiethnic Elderly Cohort
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgs.14551/full