現代における慢性的疾患の代表的なものとして糖尿病が挙げられるならば、多くの人に恐れられる疾患で、かつ罹患者も多い代表疾患といえば、がんが挙げられるでしょう。このがん治療においては、さまざまな療法が組み合わせながら用いられるものとなっていますが、いわゆる抗がん剤を用いてがん細胞の分裂を抑え、破壊する化学療法は外科療法、放射線療法とならぶ三大療法として知られています。
糖尿病との合併には注意!
そうした化学療法ですが、糖尿病を合併する患者に用いた場合、心臓への悪影響がもたらされるリスクが大きく、心不全などが起こりやすい可能性があることが、昨年12月7日~10日にドイツで開かれた「European Association of Cardiovascular Imaging(EACVI)」の中で報告されました。
この研究報告を行ったAna Catarina Gomes氏の発表によると、同氏らの研究チームは、54人の乳がん患者、20人のリンパ腫患者、9人の胃がん患者からなる83人のがん患者を追跡し、心エコー検査を随時実施、心臓のサイズ測定や左・右の収縮期・拡張期機能、左心室のひずみなどを評価して、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣といったリスク因子と心エコーデータの関連性について、ベースライン時およびフォローアップ時で比較したほか、がんのタイプ別でも比較し、検証を行ったそうです。
対象となった患者の平均年齢は51.8歳で、65人(78.3%)が女性でした。患者へのがん化学療法治療は、アントラサイクリン系抗がん剤と呼ばれるタイプのドキソルビシンを39人に、エピルビシンを44人に用いて行っています。
心不全の兆候発現割合が上昇
その結果、心筋全体としての縦方向のストレイン平均値で、心機能定量化の指標として用いられるGLSが、糖尿病を合併するがん患者では、糖尿病のない患者に比べ、有意に悪い状態であるなどの傾向が確認され、抗がん剤による心毒性発生リスクが有意に高くなることが判明したそうです。
なおがんの種別では、胃がんまたはリンパ腫に比べ、乳がんの方が現れる心毒性の程度が軽度であったことも報告されています。
心毒性は心臓に悪影響を及ぼす毒性のことで、抗がん剤における最も重大な副作用のひとつとされています。アントラサイクリン系の薬剤が引き起こすものとしては、急性心毒性、亜急性心毒性、慢性心毒性があり、急性の場合、不整脈や心不全などが現れますが、通常は可逆性で早期に対処すれば、予後も良いとされます。
しかし、慢性心毒性で左室の機能障害をきたし、うっ血性心不全を起こすものとなると、非常に予後が悪い状態になりやすいため、より早期に兆候をとらえた発見と管理が重要になります。
今回の研究は、ごく限られた対象によるものであり、そのリスクは、がん治療として得られるベネフィットを上回るものではないと考えられていますが、糖尿病との合併には十分に注意する必要があることは間違いなく、生活習慣の改善や、必要に応じた薬物治療で、リスクを低減させるといった管理が求められることを示唆していると結論づけられています。
(画像は写真素材 足成より)

European Association of Cardiovascular Imaging Congresses プレゼンテーション資料提供ページ : The effect of cardiovascular risk factors and cancer type in anthracycline's cardiotoxicity
http://spo.escardio.org/