糖尿病との診断は受けていないものの、耐糖能異常や空腹時血糖異常、HbA1cの高値がみられるなど、糖尿病予備群ともされる前糖尿病状態にある人は、世界中で年々増加していると言われています。前糖尿病の定義はガイドラインによっても異なっており明確ではありませんが、健康診断で注意を受けるなど、気になっている方も少なくないことでしょう。
160万人超を対象としたメタ解析で心血管疾患リスクとの関連が明らかに
そうした糖尿病発症リスクが高まっている人にとって、気になる研究報告が11月23日付の「BMJ」誌に掲載されました。この研究は、Yuli Huang氏をはじめとする研究グループによるもので、前糖尿病状態の人における心血管疾患リスクと全死因による死亡率について評価・検討を行ったものです。
研究チームは、PubMed、Embase、Google Scholarの電子データベースを用い、冠動脈疾患や脳卒中、その他の心血管疾患といった複合心血管イベントの発現と、冠動脈疾患、脳卒中、そして全死因による死亡と、前糖尿病状態との関連性について、補正後の相対リスクと95%信頼区間が報告されている一般集団での前向きコホート研究を特定・抽出し、データのメタ解析を行ったそうです。
抽出の結果、解析には53件の研究、1,611,339人のデータが組み込まれました。ここで言う前糖尿病状態は、米国糖尿病学会の基準では5.6~6.9mmol/L、WHO基準では6.1~6.9mmol/Lとなる空腹時血糖異常、経口ブドウ糖負荷試験における2時間時点での測定値が7.8~11.0mmol/Lとなる耐糖能異常、または米国糖尿病学会の基準で39~47mmol/mol(5.7~6.4%)、英国立臨床評価研究所のガイドライン基準では42~47mmol/mol(6.0~6.4%)となっているHbA1cの高値で定義されています。
空腹時血糖異常や耐糖能異常で心血管イベント・全死因死亡ともリスクが上昇
研究における追跡期間の中央値は9.5年で、主要評価項目は、健常な人と比較した心血管疾患発現と全死因死亡のリスクとされました。
その結果、前糖尿病状態にある場合、複合心血管イベントの発現リスクは、米国糖尿病学会の定義する空腹時血糖異常で1.13倍、WHOの基準で1.26倍となることが判明しました。また冠動脈疾患についても、米国糖尿病学会基準で1.10倍、WHO基準で1.18倍となり、脳卒中ではそれぞれ1.06倍、1.17倍、全死因での死亡リスクも1.13倍、1.13倍と有意に高くなったと報告されています。
また、耐糖能異常がみられた場合では、複合心血管イベントの発現リスクが1.30倍、冠動脈疾患は1.20倍、脳卒中リスクは1.20倍、全死因死亡は1.32倍のリスク上昇となり、こちらも関連性があることが確認されています。
一方、HbA1cの高値については、米国糖尿病学会の基準で複合心血管イベントの発現リスクが1.21倍、英国立臨床評価研究所ガイドライン基準で1.25倍となり、冠動脈疾患でもそれぞれ1.15倍、1.28倍となり関連性が見出されましたが、脳卒中と全死因における死亡のリスクでは、有意な関連性が認められなかったそうです。
研究チームでは今回の結果を受け、前糖尿病状態と心血管疾患のリスク増には関連性があると指摘し、空腹時血糖値5.6mmol/LとHbA1c値の39mmol/molをひとつの目安に、健康リスクを考えるべきだとまとめています。
(画像は写真素材 足成より)

BMJ : Association between prediabetes and risk of cardiovascular disease and all cause mortality: systematic review and meta-analysis
http://www.bmj.com/content/355/bmj.i5953