「環境ホルモン」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。これは、内分泌攪乱物質の通称として使用されているもので、環境中に存在する化学物質のうち、私たちの体にホルモン作用を起こしたり、反対にホルモンの働きを阻害したりして、障害や有害な影響を引き起こすもののことです。
曝露を減らせば糖尿病も予防しやすくなる?
人間の健康にも影響を及ぼす環境問題の側面として注目され、とくに生殖や発生、発達段階における個体レベルでの悪影響の可能性や、内分泌関連の疾病発症・障害の増加との関連性、発がん性といった観点を中心に研究が進められてきましたが、さまざまな要因が絡み合って発症する糖尿病においても、その影響がみられるとする研究論文が発表されました。
これは、「Journal of Epidemiology & Community Health」のオンライン版に10月27日付で掲載されたもので、高齢者におけるその影響を検討した研究となっています。研究を行ったLeonardo Trasande氏らのチームでは、以前にも内分泌攪乱物質への曝露と糖尿病との関連性について調べていますが、その際は中年女性におけるフタル酸塩に限定された研究であったため、今回はより範囲を拡張、ヨーロッパの高齢者でその影響を検討したそうです。
研究チームでは、スウェーデンの一般住民約1,000人が参加した、フタル酸エステルへの曝露について測定・研究したUppsala Seniors(PIVUS)研究のデータを活用し、ジクロロジフェニルトリクロロエチレン、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)、パーフルオロアルキル基質が糖尿病の発症に与える影響を横断的に検討、分析しています。
15万件超の発症予防、年間45.1億ユーロの医療費削減になる可能性も
検討を行った結果、研究チームによると、BMI指数の高い肥満状態にある場合、糖尿病発症リスクが高くなることはもちろんですが、このBMI指数を25%減少させた場合に、糖尿病発症を40%低減できるとされるのに比較して、今回の横断的分析では、化学物質(内分泌攪乱物質)への曝露を同じ25%の割合で減少させた場合、糖尿病有病率を13%下げることができると判明したそうです。
この値を現在のヨーロッパに適用して考えると、152,481例の糖尿病発症を予防し、それら治療などにかかる医療費、年間45.1億ユーロを削減できることになるとも報告されています。ちなみに、先のBMI指数を低下させた場合では、469,712例の糖尿病発症が防げると推算されるそうです。
BMI指数の大幅な改善ほど、直接的な影響があるというわけではありませんが、これほどに環境的要素も影響しているという事実は衝撃を与えるものといえるでしょう。
より健康的な暮らしのため、医療費を効果的に削減した持続可能な豊かな社会の実現のため、環境問題とも向き合っていきたいですね。
(画像は写真素材 足成より)

Journal of Epidemiology & Community Health : Population attributable risks and costs of diabetogenic chemical exposures in the elderly
http://jech.bmj.com/