近年、インレクチンと総称されるホルモンの作用に基づいたインクレチン関連薬と呼ばれる糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬)が、新しい糖尿病治療を実現するものとして、国内外での注目を集めています。
低血糖時に活性化される交感神経~副腎系反応を抑制
インクレチンは、小腸から分泌されて、血糖値が高いときにのみ、血糖値を下げるインスリン分泌を促し、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制、血糖降下作用を示すもので、このインクレチン関連薬を用いた単独療法であれば、低血糖の発現リスクが低減させられると考えられています。
糖尿病治療における重篤な低血糖は、狭心症や心筋梗塞を誘発するほか、網膜症や腎症といった主な糖尿病性の合併症や認知症などの併存疾患における発現や進行に深く関与するとされ、良好な血糖コントロールにより、できる限りその発現をなくすことが求められています。
関西電力医学研究所の矢部大介氏らによる研究グループは今回、インクレチン関連薬が、血糖値が高い場合にのみ、血糖降下作用を発揮するメカニズムを、日本人の2型糖尿病患者を対象とした低血糖クランプ手法を用いる実験で証明することに成功、さらに低血糖時に活性化される交感神経から副腎系における反応をインクレチン関連薬が抑制していることを新たに発見しました。
この研究成果は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」オンライン版に、11月29日付で掲載されています。
低血糖で誘発される狭心症や心筋梗塞のリスクを低減できる可能性
研究グループは、日本人の2型糖尿病患者35人を対象として、DPP-4阻害薬のリナグリプチンもしくはGLP-1受容体作動薬のリラグルチドを投与する群に、患者をそれぞれ無作為に割り付け、2週間投与前後での低血糖クランプ試験を行う、多施設オープンラベル・ランダム化比較試験を実施しました。
その結果、リナグリプチン投与群、リラグルチド投与群のいずれにおいても、血糖値が高い場合には血糖値を下げるインスリンの分泌が促進され、血糖値を上げるグルカゴンの分泌が抑制される一方、血糖値が低い場合には、インスリンやグルカゴンに対し、ほとんど作用しない状態となっていることが判明したそうです。
また低血糖時には、交感神経から副腎系の反応が活性化され、血行動態や脈拍が変化、狭心症や心筋梗塞の原因になると考えられてきましたが、これらインクレチン関連薬を投与すると、低血糖時に活性化される交感神経から副腎系の反応に深く関係するコルチゾールやエピネフリン、ノルエピネフリンの分泌が抑えられることが分かり、低血糖で誘発される心血管疾患の発症を抑制できる可能性があることが見出されました。
研究グループでは今後、インクレチン関連薬がどのようなメカニズムで、通常は低血糖によって活性化される、交感神経から副腎系での反応を抑制しているのか、動物モデルなどを用いて詳細な検討を展開、仕組みを明らかにしていきたいとしています。
(画像はプレスリリースより)

Diabetes, Obesity and Metabolism : Effects of DPP-4 inhibitor linagliptin and GLP-1 receptor agonist liraglutide on physiological response to hypoglycaemia in Japanese subjects with type 2 diabetes: A randomized, open-label, 2-arm parallel comparative, exploratory trial
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dom.12817/full関西電力病院/関西電力医学研究所 プレスリリース
http://kepmri.org/