糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。患者の大多数を占めるのは2型糖尿病で、これは主に遺伝のほか運動不足や食生活など、生活習慣の問題によって発症することが知られていますが、1型糖尿病はこれとは異なり、主に自己免疫性の疾患として発症、膵臓のβ細胞が破壊されて、インスリンがまったく分泌されなくなってしまうものとなっています。
ここ10年間で急増する1型糖尿病
1型糖尿病の発症原因については、いまだ解明されていない部分が多く残されているのですが、今回、その発症と環境要因がどのように関連しているかを突き止める手がかりになるであろう最新の研究報告が「Nature Communications」に11月29日付で掲載されました。
この研究は、Dirk Paul氏らによって行われたもので、1型糖尿病の発症に対するエピゲノムの影響を調べたものとなっています。エピゲノムとは、遺伝子の塩基配列(ゲノム)は変えることなく、遺伝子の働きを決め発現状態を変える、ゲノムに施された情報集合体のことで、後天的な環境要因によって変化・修飾されます。
ここ10年間ほどのうちに、1型糖尿病の発症率は大幅に増加していることから、近年はこの1型糖尿病の発症には、感染症や食生活などなんらかの環境要因が深く関与しており、非遺伝要因的なメカニズムの存在がある可能性が高いとみられるようになりました。
そこで研究チームでは、1人が1型糖尿病患者で、もう1人は健常者であるような一卵性双生児52組を対象に検査を実施、一卵性双生児のゲノムとエピゲノム、406,365のCpG(シトシン・グアニンの2塩基配列)を分析・比較し、1型糖尿病患者のエピゲノム変化を明らかにすることを試みました。
免疫細胞機能の調節に関連する変化を発見
その結果、差異的に変動するCpG位置の変化が確認され、この変化の多くは、新生児の臍帯血におけるコードからみて、遺伝要因からは説明できるものではなく、後天的にもたらされたものであると考えられたそうです。
またこうして発見されたエピゲノムの変化の一部は、mTORシグナル伝達を含む、免疫細胞代謝や細胞周期といった免疫関連機能の調節に関与する経路であることも判明しました。このことは、1型糖尿病が自己免疫疾患であるとみられてきたことと符合するものであり、今回の研究で得られた知見が、同疾患の発症に関する重要な手がかりにつながる可能性があることを強く示唆しているといえる結果です。
研究チームは今回、772のメチロームをベースに、1型糖尿病を引き起こすことにつながるエピジェネティックな変化を同定しましたが、この変化がどの程度1型糖尿病の発症と関係しているのか、またどのようなメカニズムが存在し、この変化に影響を及ぼす環境要因は何なのかを、具体的かつ正確に解明するには、さらなる研究が必要になるとしました。
全体像の解明にはまだ時間がかかるとみられますが、今回の研究を通じて重要な手がかりが得られたことは間違いのない事実でしょう。この知見を活かした今後の研究に期待したいところです。
(画像はイメージです)

Nature Communications : Increased DNA methylation variability in type 1 diabetes across three immune effector cell types
http://www.nature.com/articles/ncomms13555