糖尿病の治療薬には、さまざまな作用機序、アプローチをもつものがあり、それぞれに特徴をもって効果を発揮します。そのため糖尿病の薬物治療においては、個々の病態に適したものを選び出し、うまく使っていくことが重要になります。
糖尿病治療薬では初の心血管死リスク低減適応
こうした薬の特性を考えるうえで、注目のニュースが入っています。米食品医薬品局(FDA)が現地時間の2日、2型糖尿病治療薬であるエンパグリフロジン(製品名・Jardiance)について、新しい適応・効能を承認すると発表したのです。追加された内容は、2型糖尿病及び心血管疾患の成人患者における心血管死リスクを低減するというものです。
Centers for Disease Control and Prevention(米国疾病管理予防センター)の調べにより、糖尿病成人患者では、心血管疾患で死亡するリスクが、糖尿病を有しない成人に比べ、1.70倍高いことが判明しているため、治療薬が心血管死リスクを抑制できるという意義は非常に大きいものがあるとされています。
今回の追加適応・効果承認により、エンパグリフロジンは、糖尿病治療薬として心血管死リスクを低減させる効果が承認によって認められた世界初の薬剤になりました。
7,000人超の市販後調査結果のデータなどから承認
エンパグリフロジンは、販売製品名「Jardiance」の名称で、米国においては、2型糖尿病における血糖コントロール改善を目的とした、食事療法及び運動療法の補助療法で用いるものとしての適応で、2014年8月に承認されています。
ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)-2を阻害する作用をもったSGLT-2阻害薬に分類される薬剤で、日本でも2014年12月に承認されています。グルコースは通常、腎臓の糸球体でいったん原尿中に排出されますが、さらに近位尿細管から再吸収されるメカニズムがあり、この糖の再吸収に深く関与している輸送体がSGLT-2になります。
再吸収された分だけ、血液中の糖濃度も上昇してしまうため、この働きを阻害して糖の再吸収を抑制、尿とともに余分な糖を積極的に体外へと排泄することができれば、血糖値の低下・改善につながると考えられます。これがSGLT-2阻害薬の仕組みです。
SGLT-2阻害薬は、インスリンに働きかけることなく血糖値を下げることができるタイプの薬剤になるため、新たな治療選択肢となりやすい特徴があります。また利尿促進で血圧低下も望めます。一方で、低血糖やケトアシドーシス、腎機能障害、尿路感染症と女性の生殖器感染症が副作用として注意すべきものに挙げられています。
今回の適応追加承認においては、2型糖尿病及び心血管疾患患者7,000人以上の市販後調査の結果をもとにした臨床試験データが参照されました。この試験では、糖尿病やアテローム性動脈硬化症の標準治療に「Jardiance」を追加した場合、プラセボを追加した群に比べ、心血管死リスクが低減することが確認されました。
(画像は米食品医薬品局(FDA)ホームページより)

FDA プレスリリース
http://www.fda.gov/