糖尿病患者では、心血管疾患のリスクが顕著に上昇することが知られ、糖尿病そのものの病態管理とあわせ、こちらにも十分配慮した治療処置や日常生活の工夫を行っていく必要があります。
1型糖尿病の青年期ではハードな運動療法も有効
こうした中、若年の1型糖尿病患者では、強度の高い運動療法を一定期間継続することにより、心臓左室の機能を改善できることを示した研究報告がなされ、注目を集めています。
この研究は、Silmara Gusso氏らのグループによってなされたもので、その成果をまとめた論文は「Diabetes Care」オンライン版に7月18日付で掲載されました。
研究グループは、平均年齢15.6歳の青年1型糖尿病患者53人を対象として、運動療法を実施する群38人と、実施しない群15人とに分けて検証を実施、また糖尿病を有しない平均年齢16.7歳の健康な青年22人にも比較対照として参加してもらい、38人の糖尿病患者に行った運動療法群と同様のトレーニング介入を行って、どのような変化がみられるか、心臓左室機能と血糖コントロールを中心に調べました。
運動療法は20週にわたって実施するものとし、評価ではVO2maxや体組成もチェックしています。また左室機能の評価参考データは、安静時と急性運動実施中にMRIを用いて取得したそうです。
健常者ほどではなくとも運動介入で一定の機能改善を確認
検証の結果、運動療法のトレーニングを実施することで、1型糖尿病の運動療法実施群と比較対照の健常者群で、有酸素運動能力が10%向上、1回の拍出量が6%改善し、運動の効果が確認されました。しかし健康な比較対照群に比べると、1型糖尿病患者の群における改善度は小さいものにとどまったともされています。
また1型糖尿病患者においては、心臓左室の駆出率が9%上昇、左室収縮終期の容積が11%減少するなど収縮性が高まったことと、左室の充満圧が6%改善しており、これが1回の拍出量アップに大きく寄与し、一定の機能改善につながっていることが分かりました。
ちなみに、この運動療法を実施することにより、インスリンの使用は最大で10%減少させられましたが、血糖コントロール状況に有意な変化は認められなかったこともあわせて報告されています。
今回の結果から研究グループでは、青年期の1型糖尿病患者では、通常みられる心臓の左室機能における障害が、強度の高い運動療法を規則的に実施することで、正常レベルまでの回復はみられないものの、一定程度は改善する可能性が高いことが示唆されたとしました。
高齢の糖尿病患者の場合で、心不全を引き起こす一般的なメカニズムとなっている、この心臓の拡張機能不全が、青年期の1型糖尿病患者においては、部分的であっても可逆的であり、治療介入によって改善できる余地があると示されたことは、臨床上非常に重要なことだとも指摘しています。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes Care : Exercise Training Improves but Does Not Normalize Left Ventricular Systolic and Diastolic Function in Adolescents With Type 1 Diabetes
http://care.diabetesjournals.org/