私たちの身体を形成するほとんどの細胞は、ATPが解糖したり酸化代謝を介したりして生成するグルコースを主なエネルギー源としています。このグルコースが足りなくなると、ストレスが生じ、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)と呼ばれる因子が活性化するといわれています。
糖尿病に深く関与するAMPK
このAMPKは代謝の恒常性を保つ重要な調節因子として働いており、機能に異常をきたすと糖尿病をはじめ肥満やがんなどの発症につながります。よってAMPKは糖尿病とも非常に関係が深い因子といえますが、この活性化メカニズムにおいて、新たな知見を提供する発見が最新の研究により報告されました。
研究を実施したのはChen-Song Zhang氏、Sheng-Cai Lin氏らのグループで、その成果をまとめた論文は「Nature」オンライン版に7月19日付で掲載されています。
これまでグルコースが不足すると、グルコース代謝の低下によるATPの減少とAMP、ADPの増加が生じることから、これによってAMPK活性が促されると考えられてきました。しかし研究グループでは、グルコース欠乏でみられるAMPKの活性化が、AMPやADPといった古典的活性化因子の変化を介してのみ生じているかどうかは、未だ明らかにされていないとし、あらためてその活性化メカニズムの詳細な解明を試みたそうです。
FBPが新たな鍵、メカニズムの全容解明に近づく発見
検証の結果、研究グループはこれまでの定説とは異なり、グルコースの欠乏はAMPやADPとは無関係に、AMPKを活性化させていることを発見、そのメカニズムとなる新たな活性化経路を見出すことに成功しました。細胞内のフルクトース1,6-ビスリン酸(FBP)欠乏を感知することが引き金になるという新たな経路です。
これまでの研究で、FBPが十分にないとき、アルドラーゼが少なくともv-ATPアーゼ、レギュレータ、アキシン、肝キナーゼB1(LKB1)、AMPKを含むリソソーム複合体の形成を促進し、AMPKの活性にもつながることが判明しています。
今回の研究により、FBPには変わらず結合する、触媒欠損型のD34アルドラーゼ突然変異体の場合、グルコースが豊富にある細胞で、AMPK活性が阻害されますが、アルドラーゼのノックダウンを行うと、グルコースが豊富にあってもAMPKは活性化することが分かりました。
細胞フリーの再構成アッセイで、FBPを付加することにより、アキシンやLKB1とv-ATPアーゼおよびレギュレータとの結びつきが破壊されることも確認されました。
ここにおける重要な点として、いくつかの細胞型では急性のグルコース欠乏時でも、AMP対ATP、ADP対ATPの比率が変化しないままであり、AMPKにおけるAMP結合部位の維持はAMPK活性に必須ではないことが明らかとなっています。
これらの結果から研究グループでは、FBPの結合したアルドラーゼと解糖酵素がAMPKの活性化調節に作用するグルコースの利用可能性センサーとなっており、AMP、ADPとは無関係に情報の伝達がなされていることが立証されたとまとめました。
(画像は写真素材 足成より)

Nature : Fructose-1,6-bisphosphate and aldolase mediate glucose sensing by AMPK
http://www.nature.com/