糖尿病の患者数は1型、2型ともに年々増加の一途をたどっており、世界規模の健康問題、社会問題となっています。こうした糖尿病に対し、安全で長期的な効果をもたらせる画期的な治療法として、幹細胞エデュケーター療法(Stem Cell Educator Therapy)が有望であるとする最新の研究報告がなされました。
移植治療の一種で1型・2型を問わず有効
この研究はYong Zhao氏らのグループによってなされたもので、その成果をまとめた論文は「Stem Cells Translational Medicine」オンライン版に7月7日付で掲載されています。
研究グループは、患者の免疫細胞を臍帯血幹細胞とともに培養し、“必要な学習を完了した”細胞と患者自身の免疫細胞とを、患者の循環系に移植治療で戻すという幹細胞エデュケーター療法により、膵β細胞の機能が改善するかどうかなどを、1型・2型糖尿病患者のそれぞれで評価・検討しました。
被験者となったのは、1型糖尿病患者9人と2型糖尿病患者21人の合わせて30人で、4年間にわたる追跡調査を実施、幹細胞エデュケーター療法が長期間にわたる安全性と臨床効果をもつものであるか検証を試みています。
膵β細胞機能を長期的に改善、他の自己免疫性疾患にも有効か
1型糖尿病患者の場合では、まず診断後8カ月の女性患者、診断後5カ月の男性患者の2人において、この幹細胞エデュケーター療法を施すことにより、単回治療から4年が経過しても膵β細胞からCペプチドが正常に産生される状態が継続されており、インスリン治療が不要となりました。
一方、診断から4年後の1人の1型患者では、同療法により空腹時のCペプチド濃度が改善したものの、寛解にはいたらなかったそうです。また残り6人の被験者では、空腹時Cペプチド濃度について、経時的な低下が起きていることが確認されました。研究グループでは、これらの患者の場合、幹細胞エデュケーター療法の単回治療では、自己免疫制御への効果が十分ではなく、3カ月後にさらに治療を追加することが必要であり、それによって膵β細胞の再生を促進できるとみられるとしています。
次に2型糖尿病患者の場合では、発症から15~24年が経っている6人の被験者で、そのうち4人が単回の幹細胞エデュケーター療法により、1年後には空腹時Cペプチド濃度が正常化、4年後になっても正常なまま維持されていることが分かりました。この療法が、長期にわたっても非常に安定した効果を発揮し、安全に機能改善をもたらしていることが示唆される結果といえます。
さらなる研究・分析を重ねることにより、研究グループでは、幹細胞エデュケーター療法を受けることで、糖尿病患者の血小板の性質が調節されていることも発見、血小板やそこから放出されたミトコンドリアが、免疫細胞の増殖や機能を調節する免疫寛容の関連マーカーから確認され、とくに血小板はミトコンドリアDNAによってコードされる胚性幹細胞や膵島β細胞の関連マーカーを発現していました。
単離したヒト膵島を用い、血小板から放出されたミトコンドリアが、膵島に移動し、膵島β細胞によって取り込まれて機能の増強に寄与することも立証できたため、これらが幹細胞エデュケーター療法の効果に関するメカニズムの一部とみられるとも報告しています。
研究グループでは、今回得られた結果や知見から、幹細胞エデュケーター療法が、1型・2型を問わず糖尿病患者の膵β細胞機能に長期的な改善をもたらす安全性の高い治療法となる可能性があるほか、糖尿病以外にもさまざまな自己免疫性疾患、炎症関連疾患の治療にも応用できるのではないかとまとめました。
(画像は写真素材 足成より)

Stem Cells Translational Medicine : Platelet-Derived Mitochondria Display Embryonic Stem Cell Markers and Improve Pancreatic Islet β-cell Function in Humans
http://onlinelibrary.wiley.com/